話題の本の著者に直撃! 森見登美彦
現実と別の世界があると考えると
生きるのが少し楽になります

フライデー

—『太陽の塔』でデビューされてから10年が経ちました。今回の作品の位置づけ、今後の作家活動についてお聞かせください。

 僕は作品にメッセージをこめるタイプではありません。今回の作品も、小和田君という怠け者がヒーローになってしまう世界を創ったらどうなるだろう、それを見てみたいという感覚で書いています。現実には、怠けていてはヒーローや主人公にはなれませんよね。でも、そうではない世界を創造して読者に伝えることに、小説を書く意味があると思っています。自分たちが見ている世界の裏側に、違うルールに支配された別の世界があるんじゃないか。そう考えると生きるのが少し楽になりますし、もうひとつの世界を描くことで僕自身の心が解放されるんです。

 これまでの僕は何の計算もなく、面白いと思う文章をあれこれいじって作品にしてきました。でも、そういうふうにカンに頼って書き続けていると、今回のように自分の態勢が崩れたとき、どう立て直せばいいのかわからない。今まではカンに頼る領域が多すぎて、仕事を増やすと混乱してしまいました。これからはそのあたりをちょっと整えて、そこから先は運を天にまかせたい(笑)。自分なりの小説の書き方をしっかりと意識しながら、目の前にある作品を楽しく書いていきたいですね

著者オススメの2冊!

パリの王様たち
鹿島 茂
文春文庫 500円
19世紀のフランスの文豪であるユゴー、デュマ、バルザックの生涯について書かれた一冊。「3人の文豪があまりにもエネルギッシュで、『無茶苦茶するなあ』と思いつつ、読んでいると元気が出てきます」

ナポレオン フーシェ タレーラン 情念戦争1789-1815
鹿島 茂
講談社学術文庫 1733円
フランス革命から王政復古まで、激動のフランスで活躍したナポレオン、フーシェ、タレーランの壮大な駆け引きを書いた本。「途中でやめられないほど面白い。それぞれの〝偉大さ〟と〝人でなしぶり〟がよくわかります」

「フライデー」2013年7月26日号より