あらゆる差別に"NO"を! "ヘイトスピーチ"へのカウンター行動から生まれた「OSAKA AGAINST RACISM 仲良くしようぜパレード」

取材・文/ 西岡研介
朝方は雲の切れ間からわずかに差す程度だった陽の光は、昼ごろからジリジリとアスファルトを焦がし始め、この日の大阪の最高気温は35度に達した。
その蒸すような暑さに包まれた大阪の、キタからミナミを貫くメインストリートに、軽快な音楽に乗ったシュプレヒコールが響く。
「差別をなくそう!」
「仲良くしようぜ!」
巨大スピーカーを積んだサウンドカーの後ろには、「OSAKA AGAINST RACISM」の横断幕。その後ろを「ヘイトスピーチはアカン」、「ココロの国境をなくそう」などのメッセージが書かれたプラカードを持った人々が歩き、沖縄の伝統舞踊「エイサー」隊や、思い思いの楽器を手にしたサウンド隊が続く。しんがりは民族衣装を身にまとった「朝鮮王朝楽隊」だ。
参院選最後の日曜日となった7月14日、大阪・御堂筋で行われた「OSAKA AGAINST RACISM 仲良くしようぜパレード」。
3連休の中日、家族連れやカップルで賑わう御堂筋に突如現れた、この賑やかで色鮮やかな約700人の集団に、沿道の人々は足を止め、すれ違う外国人観光客はピースサインで応えた。

"汚れた言葉"への「カウンター行動」
が、この大阪のメインストリートには2ヵ月前、憎悪の言葉が撒き散らされていた。
「朝鮮人を殺せ!」
「在日を日本から叩き出せ!」
「在特会」(在日特権を許さない市民の会)などのレイシスト(人種差別主義者)によるヘイトスピーチ(人種や民族など生まれ持った属性を理由に人を侮蔑し、差別感情や憎悪を煽りたてる表現行為)である。
それまでインターネットの掲示板に満ちていたそれらの"汚れた言葉"の数々が、東京・新大久保や大阪・鶴橋など、在日韓国・朝鮮人(以下「在日」と略)やニューカマーが多く住む街にまで流れ出し、そこに住む人々、あるいは道行く人たちの心を傷つけ始めたのは、今年に入ってからのことだった。
そのヘイトクライム(憎悪犯罪)の"主犯格"ともいえる「在特会」ら、いわゆる「ネトウヨ(ネット右翼)」の生い立ちや習性、特殊な思考回路については安田浩一さんの『ネットと愛国―在特会の「闇」を追いかけて』(講談社刊)に詳しいのでそちらに譲るが、今年2月ごろから、彼らのヘイトスピーチを封じ込めようという動きが東京や関西で起こり始めた。
彼らが街に差別や憎悪をまき散らすのを放置できなくなった人々が、彼らと路上で真正面から対峙し、ヘイトスピーチを阻止する、いわゆる「カウンター行動」である。「カウンター」というだけに、在特会などのデモや「街宣」を迎え撃つ形で行われるのだが、回を追うごとに参加者が増え、今ではレイシスト側を圧倒しているのが現状だ。
そしてこれらのカウンター行動の中から生まれたのがこの日、大阪で行われた「パレード」だった。
