安倍政権のエネルギー政策はいったいどうなる!? 首相のリーダーシップが試される「電力システム改革」の行方

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文/ 磯山友幸(経済ジャーナリスト)

 参議院議員選挙の投票日が近づいてきた。7月に入り、日本列島は例年にない猛暑に見舞われているが、まったくと言ってよいほどエネルギー問題は争点になっていない。自民党や公明党は、原子力発電所の再稼働が必要という立場だが、世論を刺激するような強硬な物言いは避けているように見える。

 選挙公約にしてもこんな具合だ。

 「原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的判断に委ねます。その上で、国が責任を持って、安全と判断された原発の再稼働については、地元自治体の理解が得られるよう最大限の努力をいたします」

 この文章を読む限り、何が何でも原発を再稼働させようとしているわけではない、と言っているようにも見える。社民党や共産党はもちろん、日本維新の会やみんなの党など野党のほとんどは「脱原発」を掲げているが、正面からぶつかって来ない与党を攻めあぐねている。

 昨年の夏前、民主党政権は、「原発を再稼働しなければ夏場の電力が足りなくなる」と繰り返し喧伝し、7月1日に関西電力大飯原子力発電所を再稼働させた。昨年を上回る猛暑が続いても、今年はそんな「危機を煽る」手法は封印されている。選挙前にどこかの原発を再稼働させていたら、選挙戦の様相はまったく違ったものになっていただろう。それは、東京電力が柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働の前提となる安全審査の申請に動き出したことに対する新潟県の反発などを見ても明らかだ。

 では、選挙後に、安倍政権はどんなエネルギー政策を推し進めようとしているのか。

与野党が合意した「電気事業法改正案」は廃案に

 6月26日、会期末を迎えた通常国会は、事前の見込みを覆す異例の展開となった。参議院の会議に出席を拒否した安倍首相に対して、野党側が問責決議案を提出。野党の賛成多数で可決してしまったのである。これによって、与野党の合意で成立が確実だった「電気事業法改正案」が、廃案になってしまったのである。

 安倍内閣は4月2日、「電力システムに関する改革方針」を閣議決定していた。地域ごとに独占を認めている現在の電力供給の仕組みを見直し、家庭ごとに電力会社を選択できるようにするなど、3段階に分けて改革を進める方針を明確にした。その第1段階の法改正が頓挫してしまったのである。

 3段階の改革とは、まず2015年をメドに「広域系統運用機関」を新設して、地域を越えて足りない電力を融通しやすくするのが第一歩。続いて、2016年をメドに新しい発電会社が、家庭向けに電力を販売することを認め、企業向けから家庭向けまですべての電力販売を自由化するとした。さらに第3段階として、長年の懸案だった既存の電力会社から送配電部門を切り離す「発送電分離」に踏み切る。2018年から2020年をメドに実現を目指す、としていた。

 発送電分離には、電力業界だけでなく、所管する経済産業省内にも反対論が根強く存在する。長い間、9つの電力会社(沖縄を加えると10社)がそれぞれの地域の独占権を握る「9電力体制(10電力体制)」こそが、電力を安定供給するためには不可欠だとされてきた。安倍首相は、そんな独占体制に風穴を開けたのである。

 6月に英国・北アイルランドの避暑地ロックアーンで開かれたG8サミット(主要国首脳会議)に出席した安倍首相は、その途上、ロンドンで講演を行った。そこでもこんな発言をした。

 「日本の再興に必要なものは、古い日本を新しくし、新しい日本をもっと強くする、強力な触媒です。対日直接投資にその期待がかかります。2020年までに、外国企業の対日直接投資残高を、いまの2倍、35兆円に拡大します。最近の相場で換算すると、3,700億ドルを上回る規模になります」

 つまり、外国企業に日本への投資を呼びかけたのである。海外からヒト・モノ・カネが集まらなければ、経済は発展しない。だが、外国企業は、道楽で日本に投資するわけではない。チャンスがなければカネはやってこない。

 そのチャンスとして安倍首相が持ち出したのが、電力市場改革だった。「限りないイノベーションの起こり得る、大きな市場が、日本に現れようとしています」「つい先日、半世紀以上続いた市場の寡占に終止符を打ち、電力市場の自由化と、送配電の分離を進める意思決定をしたのです」と胸を張って見せたのである。

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