司会 今日は、PTPに来ています。ここは、SPIDERという新しいサービスを開発している会社です。テレビ番組を1週間分全部録画して、それを簡単に検索できるこのSPIDERはすでに、法人には普及が始まっていて、個人でも、田原総一朗さんや佐々木俊尚さん、水道橋博士などが使っています。水道橋博士は「PTPは日本のアップル」と言うほどです。
どれだけスゴいサービスなのかなどを、PTPの代表取締役である有吉昌康さんに、田原総一朗さんが聞きます。
田原 SPIDERを使うようになって、率直に言って世界が変わった。新しい社会が登場したと思いました。有吉さんは、技術者なんですか。
有吉 いえ、バリバリの文系です。
田原 以前はどこに勤めていたんですか。
有吉 野村総研です。
田原 そのときから、このサービスの構想があった?
有吉 1990年代後半から、今後、テレビはどう変わっていくのかと考えていました。
田原 野村総研の社内でこういうことをしようとは思わなかった?
有吉 社内ベンチャーで、という話もあったことはあったのですが、会社の外でやろうと、2000年に辞めました。
田原 そもそも、SPIDERって何ができるものなのか、ちょっと説明してもらえますか。
有吉 できることは、大きく3つあります。まず、1~2週間の、CMを含むすべてのテレビ番組を、自動で録画します。
田原 そういう機械はほかにもあるでしょう。
有吉 はい。でも、録り溜めてから困りませんか。どれを見るか。
田原 録画がありすぎるとね。
有吉 ひたすら録り溜めた番組は、全国に張り巡らされた高速道路と同じです。そこに道があっても、用がなければ行きません。あのサービスエリアのメロンパンがおいしいとか、あの温泉旅館の女将が美人だとか、そういう情報があるから、人は出かけていきます。
田原 情報がないと、出かけていかないと。
有吉 そこで、2つ目の特徴、検索です。これはインターネットでは当たり前になりましたが、グーグルが登場する前は、ネットには膨大な情報があって、これというものに出会うのが難しい状況でした。
田原 それが、検索できるようになると、どんなメリットがあるの?
有吉 見たいものを、瞬時に探せます。
田原 具体的には?
有吉 たとえば、以前、ボストンでテロがありましたね。これについて最新情報を知りたければ、「ボストン」とキーワード入力すればいいんです。入力はリモコンから、携帯電話でメールを打つように行えます。やってみますね。「ボストン」。
田原 今、「ボス」まで入力したら、「ボストン」という候補が出てきたね。
有吉 そうなんです。これで、1週間分の全番組から、ボストンについて放送した箇所を表示できます。しかも、番組単位ではなく、コーナー単位でできるんです。今、表示しているのは、「スッキリ!」という情報番組中の、ニュースのコーナーです。2時間25分の番組中、2時間7分27秒目から、再生できます。
田原 その検索、簡単でいいですね。
有吉 「テレビのグーグル」と説明するようにしています。
田原 検索というと、色々面倒だと思っていたけれど。
有吉 いかに簡単にできるかを研究してきました。でもこれは、すでにコンピューターの世界ではできていることで、それをテレビの世界へ、苦労しながら取り込んできました。
田原 特徴の3つ目は?
有吉 検索は、目的があるときには有効です。しかし、疲れて家に帰った人が「何か面白いものを見たいな」と思うときには、どうでしょうか。かつて、学校や職場では、テレビ番組が話題になることがありましたよね。「何が面白かった」と。でもそれを知ったときには、もう、番組を見ることができません。
田原 見たいと思ってもね。
有吉 ところが、SPIDERなら可能です。SPIDERには「ソーシャル」という機能があります。これは、ほかのSPIDERユーザーのお薦めの番組がわかる機能です。
この機能のことは、99年頃は「クチコミ」、2008年頃は「コンシェルジュ」と呼んでいましたが、最近はソーシャルブームでもあるので、ひとまずこの名前をつけています。実際のところは、ネーミングに悩んでいるのですが。
こうやって、ずらりとほかのユーザーたちのおススメが出てきます。そこから、見るものを選べます。番組丸ごとでも、あるコーナーだけでも、お薦めできます。
たとえばここに、報道ステーションのうち、アウンサン・スー・チーさんが登場したコーナーだけを選んでお薦めしている人がいます。見る側も、そのコーナーだけを見ることができます。番組のほか、CMでもできます。