佐々木芽生 第2回 「コジロウの死後、わたしを一人にさせられないと真剣に悩んでいた猫のムサシ」

島地 勝彦 プロフィール

シマジ そうなんだ。4匹のドーベルマンが頭の上を飛んでいった。ドーベルマンの精悍な腹まで見えた。おれは思わず「ぎゃあ!」と悲鳴をあげて、席を立って表のクルマの中に避難したんですよ。たしか「タッチャン、あとは頼んだ!」とお願いした記憶があります。

セオ そうですか。シマジさんに逃げられた立木先生は、写真を撮ったり、インタビューしたりで大変だったでしょうね。

立木 インタビューそっちのけで逃げ出したシマジに女優は驚いていたよ。

シマジ あのときは本当にドーベルマンに喰い殺されるかと思ったね。生涯でいちばんのパニックになった瞬間だった。

佐々木 わたしはいままた猫を飼っていますが、シマジさんは飼っていないんですか?

シマジ 愛しのチャコに操を捧げてほかの猫を飼いたくないんですよ。

佐々木 でも猫がこの部屋にいたらという切ない衝動に駆られませんか?

シマジ そんなときはネスプレッソを飲みながら、NHKのBS番組『岩合光昭の世界ネコ歩き』をみて我慢しているんです。この間みたポルトガルの姉妹の猫が2匹で産んだ10匹の子猫を一緒に育てている光景には思わず感動しました。猫はやっぱりマンションで飼うよりも田舎で放し飼いをしてやったほうが幸せそうですね。

 モロッコのマラケシュの猫の親子も可愛いかったですよ。人間の子供も、3歳までは食べたくなるくらい可愛いものだけど、子猫も産まれて3ヵ月くらいは堪らなく可愛い。

佐々木 どうしようもないことは、猫が飼い主より早く亡くなることです。わたしはドキュメンタリー映画の制作者として、コジロウとムサシの臨終のときはこころを冷酷にしてカメラを回しました。猫の死も荘厳なものです。