安倍政権の金融政策が成功してもしなくても、私たちは今後、金融政策の「次」の選択を迫られる。つまり、「これからどのような社会をつくっていくのか」「そのためにどのような戦略を立てるのか」を、私たちは選択せざるをえなくなる。それが、今後の政治の根本的な争点となるはずだ。
では、どういう選択をすると、どういう社会が到来する(と想定できる)のだろうか?
その答えは、さまざまな統計データを分析すれば、おぼろげながら見えてくる。本稿では、そうやって見えてくる「いくつかの選択肢」と「それらがもたらすであろう未来像」を紹介し、今後の政治のための判断材料を提供したい1。
何も想定しないままの選択は、必然的に「想定外」の事態を招いてしまう。筆舌に尽くし難い原発事故を経験した私たちにとって、「想定外」はもう十分なはずだ2。
避けられない「世界一の高齢化」
私たちが「選択できること」を探るためには、はじめに「選択の余地がないこと」=「必ず起こること」を確認しておく必要がある。
私たちにとって「選択の余地がないこと」の最たるものは、「世界一の人口高齢化」だ。国連の推計によれば、日本の「高齢者率」(総人口に占める65歳以上人口の割合)は、すでに世界一になっているし、今後も半世紀ほどは世界一でありつづける3。また、日本政府の推計によれば、今後たとえ「子育て支援の拡充」などによって出生率が上昇したとしても、高齢者率は2038年に33%を超え、2049年からは36%以上で高止まりする。要は、「3人に1人以上が高齢者」という未曾有の事態が、遅くとも25年後からずっと、この国を襲いつづけるのだ4。
高齢化が進めば、当然ながら年金や介護といった「高齢者向けの社会保障費」が膨張する。年金・介護・医療のために日本政府が使うお金の量は、毎年、どんどん増えていく(図1)5。そのため政府は、社会保険料や税率を引き上げざるをえない。その分、国民の生活は苦しくなる。

社会保障支出(棒グラフの絵柄部分)は、2012年には、GDP比25%にまで達した。それは、税・社 会保険料の収入を、それだけでほぼ全て使い果たしてしまうほどの大きさである。またそのうち、主に高齢者向けの「年金・介護・医療」だけで、GDP比 20%もの大きさとなっている。
では、国民の生活は、実際にはどの程度苦しくなるのだろうか?
そこでポイントとなってくるのが、2012年から実施され始めた「社会保障と税の一体改革」(以下「一体改革」)だ。ごく大雑把にいえば「消費税を今後5%増税し、その税収を財源として、社会保障を充実化・効率化・安定化させる」改革である。政府公報オンラインによれば、消費税5%増税分(13.5兆円)のうち、1%分(2.7兆円)を「医療介護・子育て支援・年金の充実」に、残りの4%分(10.8兆円)を「社会保障の安定財源」に充てる、としている。