取材・文/柳川悠二
—『マイ京都慕情』は、古都・京都に生まれ育ったみうらさんが当時を回想しながら、私的観光名所を案内する一冊です。莫大な量の京都本が世に出ているなか、あえてこの本を出版した理由を教えてください。
オレは京都の出身で、18歳まで住んでいましたが、とにかくあの街が嫌いだったんです。というか、京都以外の人が思い描く京都のイメージが苦手だった。京都旅行というと、まるでディズニーランドにでも行くように、毎年春と秋に出版されるガイドブックに載っている、イメージ通りの京都を満喫しようとしますよね。
実際に住んでいる者からすると、そうそう行かないような場所が観光地としてにぎわっているわけですよ。たしかに金閣寺や銀閣寺は京都だけど、オレの実家のあった大将軍西町だって京都なわけです。観光客のなかには、連日「大文字焼き」や「祇園祭」を開催していると思い込んでやって来る人もいる。そんなわけないでしょ。そういう間違った京都のイメージにも違和感を覚えていました。
京都に住んでいる人や京都出身の人って、京都の誇りみたいなものを持っていて、みんなが観光大使を務めているようなものじゃないですか。それならオレもマイ観光名所を紹介しようと思ったのがきっかけです。