1990年代の終わり頃、イギリスのJ・T・マニングらは「指比」なるものに注目し、研究し始めました。指比とは、薬指の長さに対する人差し指の長さの比。要は、人差し指の長さ割る薬指の長さで、基本的には右手を測ります。手のひらの側で、各指の付け根のしわの真ん中から指先までを測るのです。
この指比の値が低いほど、特に男では様々な能力が高いということがわかりました。スポーツ、音楽などの能力。しかもそれらの分野のプロどうしの間でさえ、指比が低いほど、その能力が高いのです。
指比の研究は2000年代に入るとマニングら以外にも広がり、2010年以降には、世界的な大流行となりました。何かと保守的な日本でも、これまでこうした研究に縁が薄かった、台湾、韓国でも行なわれるようになったのです。
日本では相撲とりさんが残している手形から指比を測り、その力士の生涯の勝率や最高位との関係について研究されました。横綱については東京の相撲博物館に残されている、1790年からのすべての力士について調べられているのです。
韓国ではペニスサイズと指比、台湾では学力と指比などと多彩な研究が現れました。
実は指比とは、男の場合、胎児期に男性ホルモンのテストステロンのレヴェルがいかに高かったかの刻印であり、一生にわたり比は変わりません。
我々の体は胎児期に基礎固めがなされます。指比はこの基礎固めの時期に、テストステロンのレヴェルがどうであったかのしるしであり、テストステロンによってどのように基礎固めがなされたかの情報でもあるのです。
そんなわけで、スポーツや音楽の能力だけでなく、体の臓器がいかにしっかりできているかということも関わってきます。つまり、男がかかりやすい病気についての情報も、指比からわかるのです。
本書は前作『女は男の指を見る』(新潮新書)の続編であり、世界的な流行となった指研究の最新のレポートでもあります。
我々は今、指という情報の宝庫を活用すべきときなのです。
平成25年5月
竹内久美子