◆成毛眞『本は10冊同時に読め!』(三笠書房)2013年
並行して複数(3冊以上)の本を読むことを成毛氏は勧めている。まっとうな読書法だ。成毛氏の以下の説明には説得力がある。
<おそらく多くのビジネスマンは、自分の専門分野の本ばかり読んでいるだろう。そして、1冊の本を読み通しているはずだ。それでは脳の同じ部分しか鍛えられない。バランス感覚や多角的な視野は培われないだろう。
職人や専門家は同じ分野の本を読み、脳の同じ部分を刺激させたほうがその分野に秀でた人になれるだろう。だが、ビジネスマンの場合、あらゆる本を読んで脳のあらゆる部分を刺激させたほうが、仕事に必要な感性が磨けるのである。
新しいアイデアは、そこから出てくる。・・・・・・
◆ウォルフガング・ロッツ(朝河伸英訳)『スパイのためのハンドブック』ハヤカワ文庫 1982年
NSA(米国家安全保障局)の契約職員エドワード・スノーデン氏(30歳)が米政府の機密情報を暴露したことが深刻な問題を引き起こしている。スノーデン氏は、以前、CIA(米中央情報局)に技術職員として勤務していたことがある。しかも、同氏は米当局の捜査によって追い詰められて、情報漏洩を認めたのではなく、6月9日に自らが告発者であると『ガーディアン』『ワシントン・ポスト』両紙を通じて名乗り出た。
スノーデン氏が情報発信を香港で行っていることから、中国のインテリジェンス機関とつながっているという憶測を述べる人もいるが、根拠は薄弱だ。同氏が中国のエージェントだったならば、名乗り出たりせずに、密かに中国のインテリジェンス機関に機密情報を流し続ける方が、合理的行動だからだ。そうなると、スノーデン氏が機密情報を暴露した動機は正義感ということになる。・・・・・・
◆遠藤乾『統合の終焉 EUの実像と論理』岩波書店 2013年
米国や中国、あるいはロシアに関する一般書や研究書は、日本で多数でているが、EUを専門とした研究書は意外と少ない。本書はEUの現在について知るための必読書だ。EUの基本概念をめぐってアカデミズムで行われている議論について知っておくことは、国際政治を見る目を育む上でも有益だ。
<一例を挙げよう。あまりEU研究者以外のサークルには知られていないが、European Unionを欧州「同盟」と訳すのか、それとも欧州「連合」と訳すのかに関して、日本における東西の研究者のあいだで「論争」が繰り広げられている。ここはこれらの訳語の是非を確定する場ではない。問題なのは、「同盟」訳を主張する論者が、「連合」訳は軍事を含めてすでに強大な(あるいは軍事同盟か・強大化する)European Unionには合致しないという理由づけをする点である。・・・・・・