西洋医学と東洋医学、少なくとも2000年前から交流があった!

古くて新しい漢方医学の魅力
渡辺 賢治 プロフィール

冒頭「漢方医学は明治政府が棄て去った」と述べたが、1883年に布告された医師免許規則では漢方のみを専門とする医師の存続は断たれ、医師は全員西洋医学の教育を受けることが義務づけられた。

中国、韓国などが伝統医学と西洋医学の2つの医師ライセンスを維持しているのに対し、日本の医療制度の中には「伝統医学」の医師ライセンスは存在しない。

このことは今でも伝統医学振興政策が非常に弱いという短所はあるが、東西医療融合という意味においてはもっとも進んだ制度ともいえる。

こうした東西医療の融合はいまだにどこの国でも実現しておらず、人類史上類を見ない社会実験が行われていると言っても過言ではないかもしれない。

漢方薬Photo by PhotoAC

伝統を現代風に焼き直して新たな使い方を生み出すのはなにも漢方だけの話ではない。たとえばスカイツリーが法隆寺の五重塔を参照したことはよく知られている1300年間地震等に耐え、倒壊しなかったのは心柱(しんばしら)という建物の中央を貫くヒノキの大木が地震の揺れと反対方向に動くために、倒壊を防ぐことがわかり、それを近代建築に取り入れたのが、丸ビルやスカイツリーの制震構造である。

漢方医学もまさに現代の光を当てることによって日々変化を遂げているのである。古くて新しい医学、それがすなわち漢方医学である。その魅力について、このたび講談社選書メチエから『漢方医学』という本を上梓することになった。是非ともご一読を賜れば幸いである。

(わたなべ・けんじ 慶應義塾大学教授)

 
中国にもない日本独自の医学=漢方。近代西洋医学とも融合しながら世界でもユニークな治療実績を重ねつつあるその世界を、「虚・実」「気・血・水」など東洋思想に基づいた世界観から実際の治療の現場にいたるまで、第一人者が解説する。
 
渡辺賢治(わたなべ・けんじ)
1984年慶大医学部卒、同大内科学教室勤務。90年東海大免疫学教室、91-95年米スタンフォード大等を経て95年北里研究所東洋医学総合研究所にて本格的に漢方に取り組み始める。慶應義塾大学医学部漢方医学センター長を経て、現在慶應義塾大学環境情報学部教授、医学部兼担教授。奈良医科大学客員教授。日本内科学会総合内科専門医、米国内科学会上級会員、日本東洋医学会理事・指導医・漢方専門医、和漢医薬学会理事、日本漢方医学研究所理事。厚生労働省社会保障審議会委員。WHOで国際疾病分類の改訂委員を務めるなど国際的にも活躍。著書に『漢方薬使い分けの極意』(南江堂)『日本人が知らない漢方の力』(祥伝社新書)がある。