『うつ病の現在』著:飯島裕一
うつ病の時代を生きる

 しかし今、「そう状態は目立たずに、うつ状態が顕著なタイプ」がかなりいると見られている。「Ⅱ型」と言われるこうしたタイプは、最初はうつ病と診断されることも多く、発見が遅れるケースが問題になっている。双極性障害に有効な薬剤は、かつては炭酸リチウムぐらいしかなかった。だが、近年新しい薬剤が登場。治療に明るさが見えてきただけに、的確な診断による早期発見、早期治療が求められる。

 講談社のご厚意で、一連の連載は『うつ病の現在』(講談社現代新書)として、この6月に書籍になった。

 四半世紀以上、医学・医療・健康問題を中心に取材・執筆を続けている。専門書や文献に当たり、医師、研究者らにお会いして、直接に話をお聞きすることが基本だ。難解で取っつきにくい学問的な世界を、読者の皆さんに伝える仕事である。一般紙である以上、分かりやすい文章でなければならない。だが、医学的・科学的なことをかみ砕く中で、内容が不正確になっては意味がない。私たち科学ジャーナリストは、あくまでも「医学の土俵」に踏みとどまる中での作業が求められている。

 出版になった新書が、どれだけ分かりやすいものに仕上がったか、相変わらず忸怩たるものがある。が、うつ病の最前線のルポとして読んでいただけたら幸いだ。

 全国各地の医療機関や研究所を訪ね歩いていた佐古記者が、「まるで受験勉強をしているようです」と言っていたことを、あらためてかみしめている。

(いいじま・ゆういち 信濃毎日新聞編集委員)

 
◆ 内容紹介
うつ病は、誰でもかかる可能性がある、ごく身近な病気になっている。だが、正しい知識の普及はまだ十分とは言えず、この病気に悩み、苦しんでいる人は多い。医療・科学記者が、臨床医、基礎研究者、カウンセラーなどの専門家を全国に訪ね歩き、うつ病最前線の医学・医療を取材、分かりやすくまとめた「知っておきたいうつ病のすべて」。
 
飯島裕一(いいじま・ゆういち)
信濃毎日新聞編集委員、日本科学技術ジャーナリスト会議理事。専門は、医学・医療・健康問題。1948年長野県生まれ。北海道大学水産学部卒業。1994から現職。著書・編著書に『健康不安社会を生きる』『疲労とつきあう』(以上、岩波新書)、『温泉の医学』(講談社現代新書)、『脳 小宇宙への旅』(紀伊國屋書店)など。