黒田博樹(NYヤンキース)が明かした「逆算の配球・握りの秘密」

フライデー プロフィール

〝駆け引き〟へのシフトチェンジ

〈メジャーで僕は、決して速球派の投手ではないですし、三振をバンバンとるタイプの投手でもありません。(中略)そして、バッターの癖や仕草、データや試合の流れを加味した、駆け引きの中で、打ち取っていく、というスタイルへシフトしていきます〉

 速球でグイグイ押したスタイルを捨て、ソーンダースに対しては、手足の長いローボールヒッターに有効とされる〝対角線を使う〟ため、外角低目へ沈むツーシームで打ち取る形を想定したうえで、2球目だけに内角高めの速いフォーシームを使ったのだ。

 黒田は球場に、各球団、全バッターのホットゾーン(得意なコース)を記した、百科事典ほどの厚さのファイルを常に持参する。そして、そこに日々、新たな対戦で得たデータをつけ加えているのだ。

 日本球界では、投手は〝決め球〟を持つことが重要とされる。だが、黒田はメジャーに適応するため、発想転換をした。

〈僕の場合は、メジャーに来てからブルペンでの球数は36球と決めていて、いくら調子が悪くてもそれ以上投げることはしません。そうしないと、1年間体が持たないからです。そうすると、先発のマウンドに上がった時点では、どの球の調子が良くて、どの球の調子が悪いかなどは、見当もつかない。ですから、いつも絶対の自信がある「決め球」なんて存在しないのです〉

 前述のソーンダースとの対戦では、フォーク、スライダーが使えないとわかると、すぐツーシーム主体に切り替えた。その日の体調や対戦相手のデータを総合して、試合中に決め球を探すのである。

〝メジャー仕様〟の握り

 黒田自身、アメリカに渡ってからの最も大きな変化は、「三振でも内野ゴロでもアウトはアウト」という考え方への切り替えだったという。そのため、フォーシームを投げるのをほぼやめ、代わりに精度を磨いたのが、先のマリナーズ戦でも多用したツーシーム。しかし、そのコツは偶然つかんだものだったという(次ページ写真)。

〈ある試合で、あまり変化しないツーシームに業を煮やし、このままでは打ち取れないからと半ば開き直りの気持ちで、中指をAの縫い目の外側にかけるようにして投げると、これが好感触で、この試合はハマります〉

 試行錯誤を続けるうち、ツーシームは実に投球の半分弱を占める球種となった。このボールはストレートの軌道で沈み込むように小さく曲がる。結果、バットの芯を外して下側で打たせ、内野ゴロで仕留めることを可能にさせたのである。

 メジャーに来てからの黒田のスライダーも大きく変わった。「あまり曲がっているように見えなくなった」のだ。ツーシーム主体にした投手に転向したことで、スライダーの役割が〝ツーシームかスライダーか迷わせること〟に変わったことが原因だという。