漫画『賭博黙示録 カイジ』とは?
自堕落な日々を過ごす主人公、伊藤開司(いとう・かいじ)。そのカイジが多額の借金を抱えたことをきっかけに「帝愛グループ」をはじめとする黒幕との戦いに挑んでいく大人気漫画。命がけのギャンブルを通じて、勝負師としての才能を発揮するカイジだが、その運命は果たして・・・。
(作者:福本伸行 講談社『週刊ヤングマガジン』で1996年11月号~1999年36号まで連載された作品)
【第10回】はこちらをご覧ください。
映画『カイジ』の冒頭に、帝愛グループの兵藤会長が社員に向かって「強者の条件とは何か?」と問いかけるシーンがあります。
「カネ! マネーです!」と答えた遠藤という男に対して、会長は、「ワシが聞いているのは、その金をどう使うかだよ! 当然すぎる答えを言うな、このボンクラめ!」と怒鳴りつけました。
金は持っているだけでは意味がない。使わなければ意味がない---。
これはその通りだと思います。しかし、こちらはいかがでしょうか?
金は持っているだけでは意味がない。運用しなければ意味がない---。
日本人が保有している金融資産は1,500兆円とも言われます。ただ、そのほとんどを現金や預金であり、株・不動産などの投資資産には振り向けられていません。これが日本人の悪いところだと、よく批判もされます。
特にアベノミクスが発動されてからは、「株だ!」「不動産だ!」「この機を逃すな!」とメディアによって煽られています。では、果たして、金融資産を預金で持っておくのは本当にいけないことなのでしょうか?
「低金利だから預金をしていてもムダ」
「インフレ対策のために、株や土地に換えておくべき」
こうしたフレーズをよく耳にします。たしかに、これらにも一理あります。当たり前のことながら、超低金利の時代ですから預金をしていても利息はほとんど付きません。
また、もし本当にアベノミクスで「インフレ率2%」が達成されたとすると、ゼロ金利状態の預金や、タンス預金は毎年2%ずつ目減りしていることになります。
自分の資産が目の前で減っていくのを、ただ眺めているのは得策とは言えません。そのため、株や土地に投資して資産を防衛しましょう、というのは一面では理にかなっています。
しかし、この方針は、万人に当てはまることではありません。というのは、現金や預金は、「現金、預金としての役割」があるからです。
その役割とは何か? ケインズが提唱した流動性選好説を振り返りつつ、考えてみたいと思います。
ケインズは、人には「貨幣需要」があると言っています。単純に読むと「貨幣需要=貨幣をほしがる=お金を欲しがる」と思えるかもしれませんが、そういうことではありません。
「貨幣需要」とは、「自分の資産を、貨幣(現金)で持っておきたいと思う」ということです。「全財産のうち、このくらいはキャッシュで手元に置いておきたい」と思いますよね。それが貨幣需要です。
そしてここでひとつ経済学の前提があります。「手持ちのキャッシュ」以外は全て「債権」で持つと仮定するのです。
財産といえば、土地や家、絵画、金、株、債券・・・などが思いつきます。現実の世界ではいろいろな形があるでしょう。でもここでは財産の保有形態は「貨幣(現金)」と「債券」しかないと仮定します。つまり、「貨幣」で持つか、「債券」で持つかしか選択肢がないということです。