特別対談 保阪正康×福田和也
金持ちになることは幸福なのか、不幸なのか

週刊現代 プロフィール

福田 ホンダは近年、ジェット機の開発に取り組んでいますが、あれは創業者の夢だったからだそうです。あのしつこさは本田宗一郎が遺したDNAでしょう。

保阪 僕は昭和40年代に財界人の評伝を何冊か書いたことがあり、多くの経営者に会ってきましたが、当時の財界人には理念がありましたね。財界四天王と呼ばれた小林中(日本開発銀行元総裁)、水野成夫(フジテレビ元社長)、櫻田武(日清紡元社長)、永野重雄(富士製鐵元社長)らには、資本主義こそ日本人を幸せにするという強い理念があったけれど、今の経営者には思想というものが感じられない。

福田 昔の大金持ちは、女性関係も派手でした。

保阪 政治家もそうですね。元首相の田中角栄なんか、番記者がついて来るのに平気で神楽坂の愛人の家に行っていたと聞きました。

福田 そもそも、自宅のある目白と神楽坂じゃ近すぎますよね。秘書の佐藤昭も愛人でしたし。

保阪 妾を持つのは当たり前でしたからね。かつて、ある経営者に「どうして3人も4人も愛人を囲うんですか。ずいぶん体力がありますね」と尋ねたところ、彼は「3人も4人も肉体関係があるわけないだろう。社会福祉だ」というんです。彼によれば、自分と親しい人が亡くなったら、その未亡人を妾のようにするのだそうです。肉体関係をもたずに、未亡人の生活を援助する。それが富の再分配だというのです。

福田 いくらおカネがあっても、今はそういう派手なことができない時代ですからね。本人は生活援助のつもりでも、未亡人を手籠めにしたと書かれるかもしれない。

保阪 不幸なケースを挙げれば、現役東大生にしてヤミ金融『光クラブ』をつくった山崎晃嗣は1949年、資金繰りに行き詰まり、青酸カリを飲んで自殺します。27歳でした。東大生の犯罪ということで、彼がライブドア事件のホリエモンこと堀江貴文に似ていると言われますが、私はそうは思いません。山崎は戦争という時代の苦悩を背負っていた。しかしホリエモンには屈託がない。

福田 ホリエモンには、ある種の大人の世界への反発はあったのでしょう。国家権力にはめられたとも思っているだろうけど、出所後の姿を見ても、たしかに屈託はないですよね。

保阪 昔の大金持ちは戦争や貧しさといったものを経験していて、骨のある人が多かった。今の日本は豊かになりましたから、その分、金持ちのスケールが小さくなってしまったのかもしれませんね。

「週刊現代」2013年6月22日号より

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