アベノミクスで「持続可能な成長」は生まれない
神谷秀樹「人間復興とイノベーションだけが日本経済を再生させる」

 日本経済は、名目GDPはデフレ傾向であっても、実質では上昇しており、名目と実質の平均値をとれば、ほぼ「ゼロ成長」だ。これは、どんどん悪化して行く財政赤字と比較すれば、もともとたいした問題ではない。

 デフレの本質を見てみよう。たとえば、大学生の数はかつて200万人を超えていたのが、今では140万人だ。15歳以下の子供の比率はかつて25%あったのが、今では12%だ。「高齢者が増える」と言っても「高齢者比率」が増えるのであって、「高齢者人口」自体は今後、国民全体の人口と同様に減って行く。

 こうした縮小市場を対象とした産業では、供給力が需要より過剰になるのは変えようがない。そんな状況にありながら、日本は戦後の復興期、または現在の発展途上国にしか適用できないような経済成長政策の教科書を手放さそうとしない。日銀が、毎月発行される国債の7割相当を買い上げ、2年後には国債発行残高の4割を保有するというほど資金を垂れ流しても、対策としてはまったく不適合だ。

 『人間復興なくして経済復興なし!』は、今のような成熟社会に適合する「新しい経済の教科書」を、日本人が自らの手で書き始めることを提案するものだ。多くの方が読まれ、日本の将来を考える一助としていただければ幸いである。

 また、特に若い読者の方には、自らの人生をより豊かなものにする(必ずしも「お金持ち」になることを目指すという意味ではない)ためにこそ、イノベーションを推進し、起業家として生きることを選択肢の一つとして考えてみないか、そういう道を邁進してみようとは思わないか、と訴えたい。それも含め、自分の心の中を見つめる機会としていただければと願っている。

 イノベーションを目標に掲げている経営者の方には、本来「イノベーション」とは、「人より先にするからイノベーション」であり、「人が起こしたイノベーションを自社に取り入れる」というのではイノベーションにはならない、ということを改めて認識する機会としていただきたい。

 同書は、私という投資銀行家の経験してきたこと、考えてきたことの総決算である。読者との新たな出会いを楽しみにしている。

神谷秀樹 (みたに・ひでき)
投資銀行家、ロバーツ・ミタニ・LLC創業者。1953年、東京生まれ。75年、早稲田大学第一政経学部を卒業、住友銀行に入行。同行では、ブラジルのミナス・ジェライス連邦大学での研修を経て、国際投融資部、国際企画部に勤める。84年、ゴールドマン・サックスに転職し、以後、ニューヨークに移住。92年、日本人が個人として初めて米国証券取引委員会に登録した投資銀行「ミタニ&カンパニー」を創業。その後、「ロバーツ・ミタニ・LLC」に改称。ライフサイエンスや産業用バイオのベンチャー育成などで活躍する。これまでに大阪府国際ビジネスアドバイザー、フランス国立ポンゼショセ大学国際経営大学院客員教授なども兼務してきた。著書に『人間復興なくして経済復興なし!』『さらば、強欲資本主義』『強欲資本主義 ウォール街の自爆』『ゴールドマン・サックス研究 世界経済崩壊の真相』など、共著に『世界経済はこう変わる』がある。

著者: 神谷秀樹
人間復興なくして経済復興なし!
(亜紀書房、税込み1,995円)
量的金融緩和で、経済は復興しない!
長年、冷徹に世界経済の動向を見つめてきた著者が喝破する「人間中心の経済復興」論!

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