アベノミクスで「持続可能な成長」は生まれない
神谷秀樹「人間復興とイノベーションだけが日本経済を再生させる」

 資本主義の暴走を抑制すべく提案された各国の各種の法案も、その後のロビイストたちの暗躍で骨抜きにされている。大金融機関の不祥事は止まることなく、投機家たちは過剰流動性で潤い、強欲資本主義はいまだに健在だ。

 『人間復興なくして経済復興なし!』は、このような経緯を踏まえて著したもので、その趣旨は、「人間が人間の尊厳を重視し、真に社会のためとなる人間中心の経済政策を採らないことには、社会の大半の人々を幸福にする経済復興は起こりえない」というものである。言い換えると、「金額やパーセンテージなどお金に関する数や量を神のように崇めて行う経済政策は、その発想と目標を根本的に間違えている」ことを訴えるものだ。

 私は、人々が人間の尊厳を中心に据えた経済政策を設定しようとする意思を持つならば、それは実現できるものと信じる。しかし、現実には、バブルの崩壊から学ぶべきを学び、過ちを繰り返さないようにするどころか、「アベノミクス」(ABE=アセット・バブル・エコノミックス)のように、「バブル崩壊のショックは、過剰流動性の供給により、次のもっと大型バブルを起こすことで解決しよう」というような、浅はかな政策が登場してくる。

 少し株価が上がり始めると、国民挙げて投機に走るよう煽られ、この6月のようにミニ・ショックが来るとすぐに火傷する。そこに学習効果は見られない。

 そういったことも含め、ここ数十年の資本主義が犯した過ちを振り返り、将来を考えるために『人間復興なくして経済復興なし!』を執筆した。人々がより幸福な社会を築くことを祈って。

日本は55年体制に"バック"した

 『人間復興なくして経済復興なし!』は4章から構成されるが、第1章では、ここ30年ほどの間に日米欧の先進地域で資本主義が誤用され、限界に至った様子を解説している。

  過ちの始まりは、米国においては「レーガン大統領の大減税」に、日本においてはそのような米国の要請を受けて書かれた「前川レポート」以来の行きすぎた金融緩和(それが土地バブルとその崩壊を導いた)に、また欧州においては「政治統合なくして通貨統合に走る」という失策を犯した「マーストリヒト条約」にあった。さらに、その後の病に冒された経済動向を分析し、現状に至るまでを解説している。

 これらの過ちはいまだに正されていないため、大規模な経済の崩壊を招くことを警戒しなければならない。

 第2章では、持続する経済成長を導く唯一のものは「イノベーション」であることを訴えた。そして、どのような人がイノベーターとなれるのか、真のベンチャー企業経営者の姿とはどのようなものかを伝えようと試みた。

 世間には「投機」と「投資」を同じものだと考えている人が多い。増えもしなければ、配当を産むでもなく、同じ量の金(ゴールド)が値上がりすることだけを期待する金「投機」と、何ら生産物を産まない砂漠を買い、地下から水を汲み上げ灌漑し、毎年木の実がなる樹木を育て、実ったナッツを食料として提供し、輸出し、外貨を稼ぎ、配当し、雇用を産み、従業員を食べさせて行く果樹園「投資」。

 両者は、一般には十把一からげに「投資」と呼ばれるが、本質的にまったく異なるものである。拙著ではそのことを説明し、投機に走らず、投資に精を出すことの重要性を語った。