特別レポート サラリーマン、置かれた場所で咲きなさい 思い通りにならない会社人生だから面白い

週刊現代 プロフィール

 ライフネット生命保険社長の出口治明氏(65歳)は'72年に日本生命に入社。最年少で国際業務部長となり、順調に出世コースを辿った。ところが、'03年、出口氏は関連会社に突然出向を命じられる。仕事はビル管理。明らかな左遷だった。

「理由は想像するしかありませんが、当時の社長と僕の考え方が正反対だったからでしょう。発展するには海外進出しかないという僕に対し、社長は『国内の他社のシェアを奪えばいい』という考え。社長には何度も意見を具申したのですが、彼にしてみれば正反対の考えの人間が傍にいるのが煙たかった」

 サラリーマン人生初の挫折。しかも、国際業務部長の役職定年を待っての55歳での子会社出向は、本社に戻れる可能性がゼロに近いことを意味する。

「僕は活字中毒で、歴史書はこれまでに山ほど読んできた。そのなかで、人生は運や偶然によって決まる部分が大きいことを学んだ。思い返してみれば、日本生命に入社したのだって、大学時代に司法試験に落ちてたまたま入っただけだった。特別興味があったわけではない。だから僕は、ビル管理という知らない世界を見てみるのも面白いと考えを切り替えた」

 その言葉通り出口氏は、時間を見つけて勉強をし、宅建やファシリティマネジメントなど出向先での仕事で有益な資格を取った。

「ただ、日本生命で得た経験を後輩たちに残したいという気持ちもあった。そこで、『遺書』として『生命保険入門』という本を書きました。それで、きっぱりと保険業界のことは忘れるつもりだった。しかし、知遇を得て、ライフネット生命を作ることになり、再び保険業に携わることになりました。結局のところ、人生は偶然の積み重ねなんですよ」

友人は去っていった

 田中氏の左遷、出口氏の出向以上に会社員にとって辛いのが、完全に別の会社の社員になってしまう「転籍」。現在、日本テレビで常務を務める小杉善信氏(59歳)はそんな転籍を命じられた後、本社へと復帰を果たした稀有な経験を持つ。

 編成局長として着実に業績を上げてきた小杉氏が、映像製作を主な業務とする関連会社、アックスオンに転籍したのは'09年。周囲の誰もが「小杉は出世コースから外れた」と感じた人事だった。

「全く予期せぬ転籍でしたね。局長会議の後に突然命令されたんです。会社が変わったことを思い知らされたのは、社員証の色が変わったことと、保険証の内容も変わったことです。自分はもう日本テレビの社員ではないのだなと、一抹の寂しさを感じました」

 だが、小杉氏は不本意なはずの人事を、表面上は淡淡と受け止めた。