二宮清純「田淵幸一、“頭部死球”の産物」

二宮 清純, スポーツコミュニケーションズ プロフィール

 だからというわけでもないでしょうが、ランナーをひとり置いた場面で、外木場さんは、さらに厳しいコースを攻めようと考えました。胸元をえぐるシュート……のはずが頭部めがけてとんでくれば、踏み込んでいるバッターは、よけようがありません。

 それでなくても外木場さんのシュートは速く、しかも重い球質が評判でした。阪神ベンチの中にはホームベース付近でピクリともしない田淵さんの姿を見て、最悪の事態を覚悟した者もいたそうです。

耳あて付きのヘルメット

 実はこのデッドボールがきっかけで、耳あて付きヘルメットがバッターに義務付けられるようになったことは、あまり知られていません。

 この措置に猛反対したのが、カープの衣笠祥雄さんです。耳あてが付いたヘルメットをかぶると視界が遮られ、逆に頭部付近のボールから逃げられなくなると主張したのです。機構側は衣笠さんの主張を一部認め、プロで一定程度の年数を満たした選手に限り、耳あてなしヘルメットの使用を許可したという話を本人から聞いたことがあります。確か王貞治さんも衣笠さん同様の理由で、耳あてなしヘルメットを着用し続けました。

 今では当たり前となった耳あて付きヘルメットですが、全選手の着用が常態化するまでには、田淵さんの悲劇と、そこから先の紆余曲折があったのです。