2013年4月、北朝鮮は日本海側の発射基地に弾道ミサイルを配備するとともに、2007年以降停止していた原子炉を再稼働するとの宣言を行った。
これらの行為は6ヵ国協議と国連決議に明確に違反する行為であり、同国の政治情勢に鑑みるといつ事態が変わってもおかしくない極めて危険な状態であると言える。日本は、こういった不安定で危険な国を隣国に持つということを再認識しなければならない。
北朝鮮の不安定さの増大に限らず、日本が存在する東アジア地域の安全保障環境は現在その厳しさを増している。中国は、日本の尖閣諸島への挑発のみならず、ベトナム、フィリピンとの間でも領有権紛争を引き起こしながら海洋権益の拡大を指向している。急速な軍の近代化もあって、域内の安全保障環境を不安定にし、日本の脅威となっている。
一方、北東アジア地域の平和と安定を維持する存在であった米軍のパワーが相対的に後退しているという事実も、日本の安全保障にとって厳しい現実である。私たちはこうした冷徹な事実を直視して、如何に日本の平和と安定を確保していくかを考えなければならない。
日本は第二次世界大戦後、防衛については基本的に抑制的な姿勢を維持してきた。しかし現実は甘くはない。私たちの隣国は容赦なく自国の権益を拡大しようとしているのだ。私たちはそろそろ、自分の国は自分で守るしかないという現実を直視し、国の防衛という課題から目を背けず、新時代の安全保障政策に正面から取り組む必要がある。
そういった観点から、今後取り組むべき「行動」について以下の提言を行う。
日本には、国家の安全保障戦略が存在しない。防衛力整備に関して、防衛大綱と中期防が策定されているが、米国が公表しているような「国家安全保障戦略」は存在しないのだ。
日本には、1957年に定められた「国防の基本方針」と1987年の閣議決定(専守防衛、軍事大国にならない、文民統制の確保、非核三原則のいわゆる四方針)が、国家の安全保障と防衛に関する基本方針として存在するのみであり、その後の改訂はなされていない。
しかし、日本が専守防衛を定めた冷戦時代と異なり、今や世界の安全保障環境は大きく変化し、いかなる国家も一国のみでは平和や安定を維持できなくなっている。日本も、日米同盟のみに依存した「一国平和主義」を続けることは不可能だ。
私たちは、「一国平和主義」を捨て、平和を積極的に創る国家として、東アジア地域と世界の平和に貢献する国家となるべきである。そのことが翻って日本の平和と繁栄にも直結するからだ。
このため、制定以来改訂されていない「国防の基本方針」の改訂を行い、積極的に世界の平和構築に貢献する国家としての新たな安全保障戦略を政府として定め、広くかつ根強く国民と国際社会に対して発信することが必要である。