D-Waveの量子コンピュータは本物か? ---その基礎理論を考案した日本人科学者に聞く

D-Wave Systems社のホームページより

 グーグルが先月、研究開発用に導入したD-Wave Systems社(本社カナダ)製の量子コンピュータ。前々回の本コラムでも紹介したように、これが本当の量子コンピュータなのかどうかは、まだ評価が定まっていない。

 グーグルの発表後、僅か1、2週間の間にも、D-Waveが公開した実験データに対し、同社に懐疑的な研究者たちが「これは量子コンピュータではない」と反論し、それに対しD-Waveが逆に反論するなど、議論は紛糾している。それにしても、何故これほど揉めるのか?

量子力学の原理を計算に応用

 その説明に入る前に、量子コンピュータとは何であるかを、もう一度簡単に説明しておこう。量子コンピュータとは、原子核や電子、素粒子のようなミクロ世界を支配する「量子力学」の基本原理に基づく、画期的なコンピュータだ。

 予め断わっておくと、現在、私たちが使っているパソコンのような普通のコンピュータにも、ある意味で量子力学は活用されている。たとえばCPUや記憶装置など各種半導体製品は、量子力学をベースとする固体物理学に基づいて作られている。が、それはあくまでコンピュータの素子、つまり部品レベルの話である。

 これに対し、今、話題になっている量子コンピュータとは、コンピュータが行う計算の方法に量子力学の原理を導入するものだ。これによって、「量子並列性」と呼ばれる特異な性格がコンピュータに育まれ、桁外れのスピードアップがもたらされる。それは従来のコンピュータが、ほとんど原始時代の石器のように見えてしまうほどのスピードアップなのだ。

 量子コンピュータの活躍が期待される分野は、「NP完全」あるいは「NP困難」などと呼ばれる特殊な問題だ。これらは計算方法は分かっても、それに従って実際に計算しようとすると現在最速のスパコンを使っても数年~数十年、甚だしい場合には数千年~数万年もかかるような問題だ。

 このような難問は、IT、金融、医薬品、航空、軍事など様々な産業領域に存在し、それらを解くために異次元のスピードで動作する量子コンピュータの出現が待たれているのだ。

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