脱グローバル論 日本の未来のつくりかた
第1回 グローバル社会VS. 国民国家のゆくえ その1

内田樹 中島岳志 平松邦夫 イケダハヤト 小田嶋隆 高木新平 平川克美

 その中で、今後30年、40年と続いていくであろう移行期的混乱を、あまりひどい状況にならないように、1人ひとり足下を固め、ある場合には体を張って、覚悟を決めてやっていくしかないかな、と考えているところです。

「グローバル化」VS.「市民協働」の闘い

平松 ありがとうございます。平川さんからは、ご自身の著書『移行期的混乱』、さらには『移行期的乱世の思考』での、データを踏まえたお話をいただきました。

 続いて、北海道大学公共政策大学院准教授の中島岳志さんです。実はこの2月に私は北海道大学に呼んでいただきまして、「大阪市が壊れていく」というタイトルのシンポジウムにパネリストとして出させていただきました。その時に、コーディネーターをやっていただいたのが中島さんです。どうぞよろしくお願いします。

中島 今日は平松さんが進行をしてくださるということで、最初にやっぱり橋下さんの問題に触れておかないといけないと思っているのですが……。僕は2011年11月の大阪市長選挙で平松さんを支持しました。「お前は橋下が嫌いだから平松さんを支持したんだろう」とよく言われるんですが、これは全く違います。私は大阪市長選、それから(橋下氏が知事を辞職したため同時に行われた)大阪府知事選というのは、日本の非常に重要なターニングポイントになると思いました。それは、単に橋下さん自身がどうこうとか、個人的な好き嫌いの問題ではありません。橋下さんが出してきたビジョンと平松さんが出しているビジョンの対決こそが、おそらくこれからの日本の非常に重要な選択肢になると、私は考えたからでした。

 橋下さんについては後で詳しく述べたいと思いますけれども、基本的には新自由主義的な考えの人ですね。競争社会やグローバル化を推進し、グローバル化した社会の中で日本はどう生き残っていくのか、国民への再配分をどんどんカットしていき自己責任社会を確立していく、そういう戦略や志向の持ち主だと思います。一方、平松さんが出されていたのは「市民協働」とか「with」。大阪弁の「一緒にやりまひょ」という言葉がスローガンであったりしました。われわれが社会や政治に参加していくことによって、もう一度、公共性というものを取り戻し、官と民が連携しながら生きる場を作っていこう。厚い社会やコミュニティを作っていこう。そういうビジョンだったと思います。この2つの選択肢というのは、私は非常に重要な日本の岐路だったと思いますし、これからも重要な選択肢であり続けるだろうと思っています。

 今、平川さんのお話の中に、われわれ日本人は孤独にならないといけない、というような言葉が出てきました。私はインドの研究をずっとやってきまして、非常に好きな人物にガンディーという人がいます。ガンディーは共同体をとても重視しました。自分の顔の見える範囲というものを彼は非常に信頼し、その中で社会を、しっかりとした伝統的な価値にもとづいて作っていくことに強く執着した人物です。しかし同時に、ガンディーはこうも言いました。「ウォーク・アローン」、つまり、「独りで歩め」と。ガンディーが重要視したのは、孤立ではなく、独りであることでした。独りで立てる人間こそが、実は共同体というものの重要性を真に知ることができる、と。そういう認識を持っていたんだろうと思います。