大特集「遺伝するがん」あなたは発病前に切りますか 米国の女優アンジェリーナ・ジョリーは事前に乳房を切除しちゃったけど

週刊現代 プロフィール

「ほぼ10年間の闘病生活の末、私の母は56歳で亡くなりました。子供たちは『ママにもおばあちゃんと同じことが起こるんじゃないか』と訊きましたが、私はそのたび『大丈夫よ』と答えてきました。

 しかし、実際には私も、乳がんと卵巣がんのリスクを高める『欠陥』遺伝子を持っていたのです」

 次々と解明されてゆく、がんと遺伝の関係。一方で検査技術も急速に発達し、いまやわずかな血液や唾液のサンプルから、その人の全遺伝情報を把握することができる。誰でも遺伝子を調べれば、「将来がんになる可能性」が分かってしまう時代がやってきているのだ。国立がん研究センター研究所・遺伝医学研究分野長の吉田輝彦氏が解説する。

「がんには、大きく分けて3つの原因があるといわれます。生活習慣と環境、加齢、そして遺伝です。

 皆さんも、がん患者の多い家族のことを『がん家系だ』と言ったりすると思います。これを専門的には『家族歴』と呼ぶのですが、ある遺伝子を親から受け継いでいると、どんなに生活習慣や環境がよくてもがんになってしまう場合がある。

 全てのがん患者のうち約5~10%がこうした『遺伝性がん』の患者です。ただし残りの患者も家族歴が明確でないだけで、遺伝が無関係とは言い切れません」

 ここで注意しておきたいのは、そもそも全てのがんは「遺伝子の変異」が引き起こす病だということだ。

 がんのうち、およそ9割は後天的な遺伝子の変異が主な原因である。遺伝子の上にはいくつか「がんのスイッチ」があり、タバコや酒、不摂生といった外的要因でそれらが全て押されると、細胞が異常な増殖を始め、がんが発病してしまうというイメージである。

 遺伝性がん患者の場合、このスイッチが最初からいくつか押された状態で生まれてくる。そのため、がんの発病率が高まるのだ。

 レトゥーラさんやジョリーさんは、乳がんと卵巣がんのスイッチである"BRCA"とよばれる遺伝子の変異を母親から受け継いでいたと考えられる。

「BRCAに変異があると、約70%の確率で乳がんに、約50%の確率で卵巣がんになるといわれています。これは、BRCAに変異を持つ人のうち約70%が乳がんの、約半数が卵巣がんの患者であるという過去の統計が根拠になっています。

 BRCAの変異は生まれつきのものですから、何歳で検査を受けても結果は変わりません。欧米では40歳で乳がんになった母親にBRCAの変異が見つかった場合、娘が10歳代でも、遺伝子検査を勧めることがあります」(北海道大学大学院医学研究科特任准教授・西原広史氏)

 確率の数値には見解の幅があるものの、BRCAの変異を持つ人のうち、7割前後が乳がんを発症するというのは統計的事実と考えて差し支えないだろう。

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