【前編】はこちらをご覧ください。
前回紹介したエール大学のミア・ニシカワ(西川実亜)さんのインタビュー続編。結論から言うと、彼女は将来、法律家かコンサルタントになって、自分を育ててくれたクラシック音楽界の様々な課題を解決したいのだという。私も久々に後ろから頭を殴られたような衝撃を受けた。これこそアメリカ高等教育の哲学ともいえる"Think out of box"の典型である。つまり「とんでもないことを考えて、自分の想定をはみ出せ!」ということだ。
先日、東大で講演し、東大生たちと懇親の場を持ったが、日米のトップ校の学生を比べてみて、地頭や人間性に大差はないと感じた。唯一違いがあるとしたら、「妄想力」と「行動力」ではないかと思う。とんでもない妄想を繰り広げるためには多様な知識を持たなければならない。その妄想をシェアして練り上げられる場も必要だ。そしてそれを実現するための"行動力"をサポートしてくれる後見人が必要だ。
前回、西川さんは「音楽から法律まで幅広く学べるプログラム」と「多彩なバックグランドを持つ同級生たちとの寮生活」、「身近でアクセスしやすい教授たち」をエール大学の良さとして挙げていた。
芸術から法律、科学まで学べるリベラルアーツシステムで、多彩なバックグランドを持つ学生を評価して集め、彼らを寮の中に集めて交流させる。そして、彼らのアイデアや行動に対して経験豊富な教授たちが気軽に相談に乗ってやり、実現を後押ししてやる。この学生の"妄想力"と"行動力"を育むエコシステムこそがアメリカ高等教育の強みだと思う。
今回は西川さんの妄想力と行動力を、続きのインタビューから堪能していただきたい。
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---西川さんは法律を学んでクラシック音楽業界を立て直したいと言っていました。それはどういうことですか?
ジュリアードプレカレッジ卒業後、私は音大へは進みませんでしたが、ジュリアードで出会った友人の多くが音大に進学しました。皆オーディションが多くて忙しそうです。音大生は、修士課程や博士課程へ進むにも交響楽団に入るにも、オーディションを受けなけなければならないのです。
音楽業界はとても厳しい世界で、才能を持っていても誰もが成功するとは限りません。New York Times の記事に、1994年にジュリアードを卒業した楽器専攻の学生36人のうち12人はもう演奏活動をしていない、という驚くべき統計が出ていました。私はそういう才能ある音楽家たちを助けたいと思っています。
なぜ音楽の仕事がないのか、供給に対して需要が少ない不均衡の是正に取り組みたいと思います。法律家やコンサルタントになって、音楽家の権利保護、仕事のチャンスを広げるなどの役に立つことが出来れば幸いです。
After going to Juilliard pre-college, I've kept in touch with friends who decided to go to a conservatory and pursue a career in music. Most classical musicians are constantly auditioning – for graduate degrees and for opportunities in orchestras. It's not the easiest job-market out there as a musician: as this NY Times article reports, of 36 instrumentalists who graduated in 1994 from Juilliard, at least 12 were out of the professional music performance, which is a startling statistic. I want to help those talented musicians to have opportunities in the music industry and to reduce the imbalance between demand and supply in the job market.