『市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像』(佐々木実 著)
~はじめに より 抜粋

 竹中の当面の課題は、安倍政権内部の路線闘争で勝利を収めることである。主宰する政策研究集団「ポリシーウォッチ」のウェブサイトで、「小渕内閣型」「小泉内閣型」という言葉を用いて巧みに解説している。竹中は、小渕内閣では首相の諮問機関である経済戦略会議の委員をつとめていた。

 小渕内閣が発足した時も最初の出だしは大変好調であった。次から次へと財政拡大等の政策を打って、そして中小企業に対する信用保証の政策を拡充して、危機を乗り越えて、株が上がり始めて、経済は非常に良いスタートを切ったように見えた。当時、経済戦略会議が作られて、そこでこの最初のロケットスタートの強さを更なる改革、構造改革、体質改善に結びつけて行くための政策が示されてはいたのだが、なかなかその構造改革に手がつかないままに小渕首相が病に倒れるということになった。
これに対して小泉内閣の時は最初から構造改革を全面に押し出して、そして構造改革を進めることによって、結果的には戦後最長の景気拡大を実現するということができた。
今、安倍内閣は積極的な金融政策と財政政策でロケットスタートをきっている。しかし、これが本当の構造改革、企業の体制強化に結びつくか今のところよくわからないということだと思う。
繰り返すが、安倍内閣に頑張ってもらわなくてはならない。その意味で期待を込めて、小渕内閣型ではなく、小泉内閣型になるような、そういう政策運営を是非期待したい。(二〇一三年二月九日付「安倍内閣は小渕内閣型ではなく小泉内閣型になれるか」)

「規制改革が成長戦略の一丁目一番地」の真意は、安倍政権を「小泉内閣型」へと引き戻し、日本を再び「構造改革」の軌道の上に乗せることにある。

 小泉政権は政権発足直後の二〇〇一(平成一三)年六月、「構造改革」の基本方針を発表している。「骨太の方針」と呼ばれたその経済運営の指針は、「市場の力で社会を改革する」という考え方で貫かれていた。

 経済成長は「市場」における「競争」を通じて達成されるのだから、「市場の障害物や成長を抑制するものを取り除く」ことこそ、政府の果たすべき役割である。そうした考えのもと、小泉政権は七つの構造改革プログラムを示した。筆頭に掲げられたのが「民営化・規制改革プログラム」である。