短期連載 早熟の才能は、どうすれば順調に育つのか「神童」たちの「その後」 小学生社長の中学受験

フライデー プロフィール
バイオリンを弾く3歳の維斗くん。言葉が早かったため、自ら興味あるものに次々と接触したがったという

 想定外の提案に驚いた康さんと維斗くんだったが、「維斗が考えたゲームだから、別の会社に版権を渡して商売するのではなく、維斗の思う形で商品化したかった」という康さんの思いもあり、父子は会社設立を決めた。リバネスとベンチャー企業からの出資に加え、祖父母からの援助を受けて150万円の資金をつくり、ケミストリー・クエスト社は船出した。

 だが、ななさんの目には、維斗くんの小学生と社長業の〝二足のわらじ〟は好ましく映らなかった。小4のときの模試で全国1位になり、難関中学受験を決めていたからだ。会社設立とゲーム制作に忙殺されたのは、よりによって受験勉強のヤマ場である小6の夏のことだった。

「やはり維斗の学力が活かせる学校に行かせたかったんです。それなのに、『何やってんの』という感じで(苦笑)。結局、6年の夏休みは、ケミクエのゲームづくりで終わってしまったんです」

昨年の「東京おもちゃショー」で、販売促進を兼ね子どもたちとケミクエをプレーする維斗くん(右端)

 進学にヤキモキする母をよそに、維斗くんの描くイメージをデザインに落とし込んだケミクエは、 '11年秋に販売を開始した。「小学生社長誕生」とメディアの取材が殺到し、企業経営者の父子は、それらに対応した。昨年には中国・上海の雑誌「週末画報」でも取り上げられ、〝アジアの若き精鋭100人〟に選ばれている。

 さて、受験の結果はというと、維斗くんは、第一志望の筑波大学附属駒場中学校に合格した。偏差値で最上位に位置する超難関だ。ななさんは結果に安堵しながらも、「周りからは『そんなはずない!』と言われるけれど、小さい頃から受験を意識した教育はしていません。維斗がやりたいことをやらせてきたら、学力がついてきた感じなんです」と説明する。

 維斗くんが小3から週1回だけ通っていた塾は、知識の詰め込みを否定し、文章問題の内容をイラストで表現させ、イメージを膨らませて解かせることで考える力を養うという方針だった。

 中学に合格した直後、維斗くんは社長業への意欲をこう語っていた。

「ケミクエ以外にもゲームの構想はあと三つあるので、これから本格的にフル稼働しますよ」

 起業から2年近くが経った今、ケミクエは5万セット以上を売り上げ、iPhone用のアプリは世界中からダウンロードされている。設立当初は「痛い出費だし、大きな賭けです」と話していた康さんに「順風満帆ですね」と聞くと、