GW合併号特別企画 第3部 人生いろいろ、秀才もいろいろ行方不明になったやつもいる無職でブラブラしているやつもいる 開成、灘、筑駒 卒業30年後の「神童」たち

週刊現代 プロフィール

 同窓会などで同級生たちに会うと、金融関係者でも、『儲かってなくてもいいだろ。それより、意義のあることをしよう』と話していて驚きますよ」

皇太子と友だち

 前出・マネックス証券社長の松本氏と開成の同期にあたる井川治久氏(50歳)は、「ネオ開成塾」を経営する塾講師である。

「中2で留年してしまったおかげで、自分は天才でないことが早い段階でわかって、天職を見つけることができた」

 浪人中に塾講師となることを決めた井川氏は、早大第一文学部に進むと、2年生時に塾を開校。3年後には早稲田予備校にスカウトされ、800人規模の教室に立ち見が出るほどの人気英語講師となった。

「やっぱり生徒がわからなかったものがわかるようになった瞬間、そして志望校に合格した瞬間の喜びはなににも代えがたいですよ」

 灘OBの変わり種に「水の専門家」がいる。東大教授の沖大幹氏(48歳)。穀物や畜産品の生産に費やされる「仮想水」という概念を用い、世界中の水資源のバランスについて考えるという、スケールの大きな学問の第一人者である。

 実は沖氏は、水問題に造詣が深い皇太子殿下にも一目置かれる存在だ。

「'08年にサラゴサ(スペイン)で水をテーマとした万博が開かれた際、日本館に来館された殿下に展示内容のご説明をしました。そのご縁で殿下の講演を拝聴する機会をいただいたり、殿下がお忍びで水に関する国際会議にお見えになった際、お話をさせていただいたりしています。

 アカデミックな世界では灘出身者はそれなりに活躍していると思いますよ。テレビでよく見る有名学者はいなくとも、地味に支えていると思います。むしろ私は学者として露出しすぎかもしれませんが、マイナーな水のジャンルに優秀な人材を確保するため、自分が広告塔になることも必要だと考えています」

 その沖氏が「灘の同級生ですごいと思う人物」に名を挙げたのが、フリー編集者兼ライターの新保信長氏(48歳)だ。「腕一本で勝負しているから」というのがその理由。確かに灘卒でフリーライターをするのは極めて稀なケースだろう。新保氏が言う。

「全然すごくないですよ。就職で大手出版社に落ちて、編プロなどを経て流れ着いた出版社が激務の割に給料が激安で、これくらいフリーでも稼げるわ、と思って独立しただけですから。

 自営業の親は僕に医者か弁護士になってほしくて、文学部に入って失望され、聞いたこともない出版社に就職して失望され、フリーになって絶望されました(笑)。35歳で自分の名前で本を出して、ようやく少し認めてくれたようです」