NTTはどこへ行くのか
【第7章】将来に向かって、なすべき課題(2)
1万社の顧客をクラウドに導く攻めの戦略

米国で先端クラウド・サービスを営業するNTTコミュニケーションズ (ONS2013で筆者撮影)

第7章(1)はこちらをご覧ください。

 前回は、昨年11月に発表された新中期経営計画が守りと攻めを明確に示していると述べました。また、守りの一例として、コストカットによる財務体質の強化に触れました。今回は、いよいよ同計画における「攻め」の部分について考えてみたいと思います。

通信事業とソリューション事業の比較

 海外市場を攻める新中期計画ですが、その目標は並大抵ではありません。NTTコミュニケーションズやNTTデータは、海外でAT&Tビジネスやベライゾン・ビジネス、欧州のオレンジ・ビジネスといった通信系システム・インテグレーターと競争しています。ソリューション・ビジネスを強化するとなれば、これにIBMやヒューレット・パッカードなどが加わることになるでしょう。

 この目標を実現するために、NTTグループはどのような組織改革をおこなわなければならないでしょうか。ここではまず、分析を単純化するために、設備面(インフラ)、人的資源(ヒューマンリソース)、資金面(キャッシュフロー)の3要素に分けて通信事業とソリューション事業の比較をしてみましょう。

 従来、ソリューション・プロバイダーやシステム・インテグレーターは、顧客企業のITシステム構築と運営をおこなってきました。企業それぞれが、自社の設備を持つやり方をオンプレミスと呼びます。システム・インテグレーターは、企業に専門エンジニアを派遣し構築運用するので設備を持つ必要がありません。

 米国ではデータセンターなどを所有して、収益率を高くする傾向にありますが、全世界的に見ると多くのシステム・インテグレーターはオンプレミスを主体とする人材派遣業です。通信事業に比べると、彼らは設備への依存度が低く、売り上げに対して従業員比率が高いといえます。

 一方、通信事業は設備ビジネスです。長距離幹線網からオフィスや自宅を結ぶアクセス網まで巨大なネットワークを構築・維持しています。最近では、モバイル・ネットワークとデータセンターの整備を進めており、その設備規模は拡大するばかりです。つまり、システム・インテグレーターに比べると、通信事業者は設備への依存度が高い一方、少数の従業員で多くの売り上げをあげています。

 設備への依存度が高い通信事業者は、必然的に長期投資・長期回収が基本となります。もちろん、技術革新に応じてサービス開発をすすめ、顧客拡大を続けなければなりませんが、サービスやプロダクトのライフサイクルは長いといえます。

 逆に、システム・インテグレーションは設備などに投資する必要が少なく、社員教育や人材確保に費用が掛かるとはいえ長期投資とは無縁です。サービス開発のサイクルを短くして、顧客が継続的にシステム投資を続けるようにすることが重要です。通信事業にくらべシステム・インテグレーターは短期投資・短期回収と言えるでしょう。

 話をまとめれば、システム・インテグレーターは設備依存度が低く、売り上げに対する従業員比率が高い。資金面では短期投資・短期回収を特徴とします。一方、通信事業者は、設備依存度が高く、売り上げに対する従業員比率は低い反面、長期投資・長期回収を特徴とします。

 ただ、この現状は今後、クラウド・コンピューティングの普及によって大きく変化すると予想されています。

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