結果的に幸せだった「がん宣告」それでも治療を選ばなかった人たち

週刊現代 プロフィール

100%死ぬわけではない

「9年前に実兄を大腸がん、8年前に義兄を食道がんで失ったときの治療を見てきたことが、私自身のがん治療は拒否しようと決めた大きな理由です。

 二人とも手術を受け、抗がん剤治療を行って退院したのですが、医師から『体力のあるうちにもう一度がんを叩いておきましょう』と言われ、2度目の抗がん剤治療をしたんです。その"念のため"の治療を始めて1ヵ月もしないうちに亡くなりました」(山口さん)

 実際、抗がん剤の副作用から死に至るケースは少なからずある。こうした経験から現代医療への不信感が増し、山口さんは、断食や玄米中心の食事療法など独自の道を選択した。医師から宣告された「何もしなければ3年持たない」という余命はすでに超えたが、いまも元気に暮らしている。

 がんの進行状況だけは定期的に病院でチェックしているが、発見当初の状態から進行しないまま、がんはおとなしく治まっているという。痛みなどの症状もまったく出ていない。

 がん治療を拒否した患者のすべてが、山口さんのような経過をたどるわけではないが、治療を受けなくても延命している患者が多数存在するのも事実だ。

 がん治療の難しさについて、「がん哲学外来」を開設し多くのがん患者との対話を続けている樋野興夫医師(順天堂大学医学部病理・腫瘍学講座教授)はこう語る。

「がん治療の問題は、われわれ医師にとってはグレーゾーンの部分があるんです。治療の効果について70%くらいは医学的に証明されていることで説明できるけれど、説明できないこともある。例えばある抗がん剤が本当にその患者さんに効くかどうかは医者にもやってみなくてはわからないことがあります。統計学的にある程度効くとは言えるが、使う患者によって副作用も違うし、ある人は使っても再発するし、ある人はそれで治ってしまう。まさにケースバイケースなのです」

 グレーゾーンだからこそ、「この治療をすれば5年生存率は50%だが、やらなければ20%」といった曖昧な言い方になる。「手術をすれば100%助かるが、やらなければ0%」とは言えない。これががん治療の現実なのだ。

痛みはコントロールできる

 では、実際にがん治療を受けなかった場合、患者の身体はどのように変化していくのだろうか。

 進行のスピードは個人によって異なるが、がん細胞は無限に増殖を続けていく。だが、「基本的にがん自体に症状はない」という。前出の鈴木医師が解説する。

「がんはどこにできても、がんそのものから痛みや苦痛は出ません。痛みは、がんが大きくなって周辺の神経に触ったときに生じます。すい臓がんは痛みがきついことで知られていますが、これはすい臓の尻尾の部分が脊髄の太い神経に接しているため、がんが大きくなると脊髄の神経に食いこみ、激しい背中の痛みや腰痛が出るのです。