岩手の天才少年書道家と大震災

短期連載 早熟の才能は、どうすれば順調に育つのか「神童」たちの「その後」
フライデー プロフィール

「盛岡はいいところなので、ここで稼げる仕事を見つけたい。習字は趣味で続けます。年とともに心のレベルを成熟させて、多彩なバリエーションを持った大人になって、その中で、時期ごとに最高のレベルで字を書くこと、そして、人の心に強く印象を刻む字を目標にしたい。書道は、自分のためにも人のためにも一生続けていきます」

 昨年のクリスマス、卓也くんはコックピットに友人を招いてクリスマス会をした。「同級生とは趣味や話が合わないから、話すときは〝普通の中学生レベル〟まで落としている」なんて憎まれ口をききながらも、クリスマスカードを自作したり、パソコンのディスプレイ上に皆が見て楽しめる動画を作成したりと、準備に余念がなかった。結局、人のために何かすることが好きなのだ。

 卓也くんが「天才書道家」であり続けるか否か。本人はそのことに、まるで関心がない。寡黙な少年はこれからも、コックピットの中で目の前にある興味を突き詰めていくだろう。その傍らには、息子の稀有な才能を信じて放任してくれる母親が寄り添っているはずだ。

おおた・あや 1976年生まれ。ベネッセコーポレーション勤務を経て、'06年にフリーに。著書『東大合格生のノートはかならず美しい』(文藝春秋)がベストセラーに。他に『超小学生』(小学館)など

「フライデー」2013年5月24日号より