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「遺産」は「遺物」ではない。半永久的に使用可能だ!

鉄道技術の歴史を巡る『東京鉄道遺産』

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明治・大正・昭和の貴重な鉄道施設を
専門家が解説!

日本初の鉄道が開業した東京には、明治以来、数多くの路線が建設されてきた。そのため、あらゆる時代、あらゆる種類の鉄道構造物が集積し、今も鉄道輸送を支え続けている。

本書では、東京の鉄道遺産を訪ねながら、その歴史や技術史的な見どころを専門的な視点で紹介。鉄道技術史研究の第一人者が執筆した、本格的な解説書。

新橋駅汐留口にあるD-51の動輪と鉄道唱歌の碑 Photo by MiNe / Flickr

『東京鉄道遺産』はじめに

明治維新とともに、江戸から名を改めた東京は、一国の首都にふさわしい姿に整備されることとなった。

 

本書の主題である鉄道はもとより、道路、港湾、運河、水道、市場など都市としての機能を維持するためのさまざまな施設が、約150年間にわたって建設されてきた。

基本となったのは、江戸幕府から引き継いだ江戸の市街であったが、そこにさまざまな時代のさまざまな社会基盤施設(インフラストラクチャー)が地層のように折り重なって堆積しているのが、現在の東京の姿である。

東京は、銀座大火や関東大震災、東京大空襲など大きな災厄にも遭遇し、そのつど復興を繰り返してきた。こうした災禍を乗り越えて、今なお現役で用いられている構造物は数多い。

しばしば「そんな古い構造物を使っていて大丈夫なのか?」と質問されるが、すでに幾多の災厄をくぐり抜けてきた構造物なので筋金入りである。

構造物の寿命は、「何年経ったから」ではなく、「現在も使用に耐えられるかどうか」で判断されるので、的確な検査や修繕が行われていれば、半永久的に使用し続けることができる。

本書で紹介する構造物のほとんどは現役なので、「遺産」という言葉に違和感を覚える方がいるかもしれないが、後世に伝えるという意味での「遺産」であって、決して過去の「遺物」という意味ではない。最近は「世界遺産」の影響で「遺産」という言葉もポジティブに解釈されるようになったが、本書の「遺産」も同様の趣旨である。

また、「全国」ではなく、「東京」に限定したのは、あらゆる時代、あらゆる種類の構造物がここに集積し、鉄道輸送を支え続けているからである。