NTTはどこへ行くのか
【第7章】将来に向かって、なすべき課題(1)
新中期経営計画を読み解く

鵜浦博夫NTT社長 (写真提供:NTT)

第6章(3)はこちらをご覧ください。

 2012年11月8日、NTT持株会社は「新たなステージを目指して」と題した中期経営計画を発表しました。あるNTT幹部は「あそこまで通信サービスをバッサリとやって大丈夫なんだろうか」と感想を漏らし、私も思わず「驚きました」と相づちを打ってしまったほどです。

 同計画書は現状認識から始まり、NTTグループの理念を述べた後、「グローバル展開」と「ネットワーク・サービスの強化」を目標に据えています。これは今回社長に就任した鵜浦博夫氏が示すNTTグループの新たな方向です。読み込んでゆくと、グループ全体に与えるインパクトの大きさに背筋が寒くなります。

新たなステージとはなにか

 まず、今回の中期経営計画の骨子を私なりに読み解いてみましょう。

 計画書の一ページ目は、先ほども述べたように現状分析です。現在をインターネット時代と定義しています。一方、これから向かう世界を『インター・サービス』という新しい言葉を作ってまとめています。この新時代を実現する原動力として、ビッグデータ(超大規模データ処理技術)やM2M(機械間コミュニケーション)、仮想化(クラウド)などの要素を示しています。

 これはクラウド時代といってもよさそうですが、敢えて造語を使っています。クラウドでは、一般の方がアマゾン・ウェブ・サービスやグーグル、マイクロソフト・アジュールなどの「クラウド・コンピューティング」と勘違いするからでしょう。そこで新しい言葉を作って区別したと推察しました。確かに、この計画の目指すものは単純なクラウド・コンピューティングとは違います。

 NTTグループの予想するインター・サービス時代の特徴は、次のふたつです。

〈インター・サービスとは〉
①オープン&シームレスな利用環境(ディバイスフリー、OSフリー)
②パーソナル化されたUI/UX(シンプル&フレンドリー)

 2ページ目は「NTTグループが果たすべき役割」と題して次の三つをあげています。

①お客様のニーズにあわせて(Suitable)
②より簡単・便利に(Simple)
③より安心・安全に(Secure)

 私はこの最初の部分を見て思わず『唸り』ました。これは売り上げ10兆円を超える通信会社の事業計画書なのですが、その冒頭にはもはや電話もテレコミュニケーションという言葉も見当たりません。「インターネットからインター・サービスへ」という部分は、ネット(通信)ではなくサービス(ソリューション)へ、という示唆でしょう。

 また、企業理念を説明したこのページのタイトルが「プロバイダーからバリューパートナーへ」となっています。つまり、NTTは(テレコム)プロバイダーから脱皮して、企業や個人にソリューションを提供するバリュー(付加価値)パートナーになると宣言しているのです。

 どこを見ても、これは通信事業者のビジネス・プランとは読めません。先ほど、NTT幹部が「あれほど通信をバッサリやって大丈夫だろうか」と漏らしたのは、まさにこのことにほかなりません。

 もちろん、後半には通信事業の目標が並ぶのですが、冒頭だけをみれば「テレコミュニケーションにおける成長戦略など視野にない」とも受け止められかねない内容です。つまり、この中期計画は非常にスケールの大きな構造改革案です。

 もはや、携帯や固定電話、ブロードバンドなどの戦術的なマネージメントにとらわれていません。社会全体がクラウドやビッグデータによって変わろうとしているのだから「通信にとらわれず、NTTグループもそれに合わせて変わる」と堂々と宣言しています。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら