第33回 福富太郎(その三)
殺人犯ホステスを自首させた---福富氏本人が今、その「秘話」を明かす

福田 和也

犯人と相部屋だった子も、警察も怯えていたところ・・・・・・

 でも、僕は「かくまったらよけいまずい」と云ったの。

 実は前にね、渋谷で事件があった。うちの従業員に、何かの犯人がいたらしいんだけど、僕が自首させなかったって、二年間ぐらい云われたことがあったんです。

「あんた方に来てもらったんだからね、もう殺人犯が、本当だったら、これだけ全国指名手配になってるんだから、捕まえなきゃダメだよ」

 うちの店、ホステスさんは住み込みの場合、二人一部屋なんです。一人一部屋じゃ採算がとれないんで。

 で、指名手配されている子と相部屋になった子が店に逃げてきた。

福富氏、大いに語る 1973(昭和48)年、時の警視総監から感謝状(写真奥)を授与された逸話を、福田氏に思い出深く語った

「逃げてきた子はどこにいるんだ」「もう出勤してますよ。四時だから早いけど出て来た」と。「じゃ、その子呼んでみろ」って、呼んだんですよ、化粧部屋に。本当に震えてるんですよ、怖い怖いって。

 それでね、「これ、どうする」と云ったらね、OBが「よく調べてみないと、人権侵害になりますよ」と、えらい慎重なんです。

 そうしたら、うちの従業員が、まあ、バカと云えばバカなんだけど、一一〇番かけちゃったんですよ。一一〇番で「うちの店のホステスが殺人犯らしいんですけれど、どうしましょう」ってかけちゃった。

 そうしたらね、ピューッとパトカーが一分以内に、三台も続けてうちにきたんですよ。「あんた、こんな早く呼んだって、証拠がまだわからないのにね、困るよ」ってOBが云うの。

 そうこうしている内に、犯人の女の子が、「おはようございます」って、来たんです。
 警察も怯えててね。証拠もないのに、自分たちが行ったら顔が立たない、と。