現代の投資と企業経営に通じるもの【後編】
谷家衛「生き残れる投資家と生き残れない投資家は、何が違うのか」

損失の限定ができない投資は、絶対にするな

 ここで、私ども、あすかアセットマネジメントの投資哲学のひとつを紹介します。それは、「イベントリスクの回避」です。それによって、大幅な損失を避け、運用収益の最大化を実現しようというわけです。

 このため、厳格なストップロス(損切り)ルールを適用し、それに沿っていつでも損切りができるよう、流動性を確保しています。これはソロスの哲学と重なるやり方です。

 そして、大きくポジションを構築するのは十分な収益機会があるときに限り、分散投資を徹底して、損失の限定ができないポジションは絶対に取りません。これは、私も含めて運用者全員で共有している鉄則で、創業当初から一貫して実践しています。投資銀行とヘッジファンドの良さを融合したリスク管理の手法と言えます。

 私たちはまた、平常時とイベント時の投資基準も明確に区分しています。

 平常時は、流動性が高く、ベットの数(収益要素×取引頻度)の多い戦略を中心に据えています。損失が限定できない場合や、十分な収益機会がない場合には、無理にポジションを取りません。

 一方、イベント時は、まず厳格にストップロスルールを適用します。「投資元本の確保」を最優先に考えて、行動するのです。そして、相場がある程度落ち着き、ダウンサイド(損失)が限定され、十分な収益機会が見込めると判断した場合、大きくポジションを構築します。

「投資の魔術師」になるためのアドバイス

 ただし、どんな事業でも、成否を分ける最も大きな要因は「経営者」です。事業とは「誰がやるか」に尽きるものなのです。

 その点、前述のバフェットは、経営者の選定基準として次の3点を挙げています。①社会に対して誠実な経営者②資本を合理的に配分する経営者③自己満足したり、自分自身を他の経営者と比較したりすることを避ける経営者---です。企業を見るとき、経営者を見るときに、大きな参考になる指標です。

 最後に、自らも優れたトレーダーであるジャック・D・シュワッガーが著した『マーケットの魔術師 米トップトレーダーが語る成功の秘訣』から、企業経営にも参考になる、まさに「投資の魔術師」になるために心得るべき教えを私なりにまとめて、紹介したいと思います。

 まず、①「偉大なるトレーダーは実に多様である」ということです。優れた投資家というのは、それぞれが個性的で、絶対的な王道など存在しません。

 次に、②「すべての偉大なトレーダーに共通の特質は規律(ディシプリン)だ」ということ。自分を律することのできないトレーダーは、良い業績を上げられません。