現代の投資と企業経営に通じるもの【後編】
谷家衛「生き残れる投資家と生き残れない投資家は、何が違うのか」

 裏を返すと、①本格的に投資する前に、低コストで低リスクの実験を十分に行っており、②市場に対して一貫して謙虚でいられる---という二点が「生き残れる投資家の条件」ということになります。これをうまくやって成功を収めている投資家を仮に2人挙げると、「割安株への長期投資」で巨額の実績を上げてきたウォーレン・バフェットと、前述したジョージ・ソロスになるでしょう。

 2人は対照的に見られがちですが、実は、共通して持っている哲学があります。それは、どの国でも、どの時代でも通用する投資哲学と言えます。以下では、その説明をしていきましょう。

バフェットとソロスが共に強調すること

 バフェットとソロスの投資行動の共通点は、大きく2つあると思います。

 まず、①「投資元本の確保を優先すること」です。これによって、彼らは「投資家としての死」を回避しています。

 バフェットは、投資先を厳選して、そこへ集中的に投資しますが、平常時はあまり投資しません。ソロスは、まず莫大なポジションを確保するところから始めますが、市場が逆に動けば、逆にポジションを取り直します。

 『バフェットとソロス 勝利の投資学』(マーク・ティアー著)という本に、そんな彼らの言葉が紹介されています。バフェットは「第一の原則は、絶対に損をしないこと。第二の原則は、第一の原則を絶対に忘れないこと」と言い、ソロスは「まず生き残れ。儲けるのはそれからだ」と言っています。

 彼らのもうひとつの共通点は、②「能動的にリスクを管理していること」にあります。

 バフェットは、平常時にはリスクテイクをしていません。「他人が貪欲になっているときは恐る恐る。まわりが怖がっているときは貪欲に」という自分の言葉通りに動いています。

 ソロスは損切りを徹底しています。常に市場を監視していて、すぐに損切りをする姿勢は、やはり自分の「金融市場で生き残ることは、ときに急いで逃げ出すということになる」という言葉そのものです。

 また、何の本で読んだか忘れてしまいましたが、ソロスが、かつて一緒にクォンタム・ファンドを共同運営していたジム・ロジャースについて語った言葉が印象に残っています。

 ソロスはロジャースを「素晴らしい人」と誉めていますが、一方で「私はいつも『自分が間違っているかもしれない』と考えていたが、ジムは常に『市場より自分が正しい』と思っていた」とも評しています。この点が、投資界の巨人と呼ばれる2人の間にある大きな違いと言えるでしょう。