現代の投資と企業経営に通じるもの【後編】
谷家衛「生き残れる投資家と生き残れない投資家は、何が違うのか」

 世界的な投資家として有名なジョージ・ソロス(クォンタム・ファンド創設者)は、早いうちからこのことに気づいていました。彼はロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの学生時代、科学哲学者カール・ポパーに学び、その理論を深く研究していたそうです。

 ソロスは、自分が何をどう考えても師と同じ結論にしか到達できないことに失望して、金融の道に進みます。そして、金融市場において、この原因と結果が双方向に互いに影響し合う理論を「再帰性」と呼んで活用し、大成功を収め、「マクロ・ヘッジファンド運用の巨匠」と言える存在になりました。人も市場も過ちを犯すとするソロスの考え方は、ポパーの思想の強い影響を受けて生まれたのです。

「生き残れなかった投資家」の2つのタイプ

 過去15年ほどのヘッジファンドのインデックスの推移を、「運用スタイル」別に調べてみると、どんなファンドもその年その年で実績が上下しており、「常に優位性を保てる戦略(運用スタイル)というものはない」ということがわかります。また、市場リスクを取っているファンドは市場の影響を大きく受けるものだ、ということも明らかになりました。

 こういった激しい動きがある中で、投資家は、栄枯盛衰を繰り返します。中には、一世を風靡したものの、結局は生き残れなかった人も少なくありません。

 生き残れなかった投資家たちには、共通点があります。そのうち、主な2つのタイプを説明しましょう。

 まず、①「広く十分な実験をする前に、少数の対象に向かって資金を集中投下し、多くのリスクを取りすぎた人」です。要するに、たくさんの銃弾をあちこちに撃つ前に、大砲をどんと撃ってしまった人ということです。

 もちろん、最初から大砲が当たれば出る結果は大きいのですが、そうなる可能性は低いのです。しかも、仮にちょっと当たったところで、このやり方では長続きしません。

 生き残れなかった投資家の二番目のタイプは、②「市場よりも自分が賢いと思い、市場に対して謙虚になれない人」です。

 こういう投資家は、自分が想定しているのと反対の方向に市場が動いたとき、それを受け入れることができず、「今の動きは間違っており、市場はやがて"正しい"方へ戻ってくる」と思い込み、よりポジションを増やしたりします。しかし、市場の動きがその投資家の想定した方向に転じる可能性は低く、さらにダメージを大きくしてしまうのです。