現代の投資と企業経営に通じるもの【前編】
谷家衛「小さな銃弾をたくさん撃ってから、大砲を発射しよう」

 『ビジョナリーカンパニー 4』では、いくつかの主要なリスクも紹介されています。それは、①深刻な打撃を与える「死線リスク」、②ダウンサイド(損失)がアップサイド(利得)よりも大きい「非対称リスク」、③自力で管理・制御できない不可抗力「制御不能リスク」などに分類されます。

 前述したイベントリスクは、③の制御不能リスクの一種と言えるでしょう。これをコントロールできないのであれば、残りの①と②のリスクはなるべく避けなければならない---。このような趣旨を『ビジョナリーカンパニー 4』は述べています。

 この考え方もまた、私の方針とぴったり重なります。2002年にあすかアセットマネジメントをスタートしたときから変わらない、私の会社の投資哲学そのものと言えます。

 ②の、ダウンサイドがアップサイドよりも大きい「非対称リスク」とは、「ある程度は利益が得られるかもしれないが、何か問題が起こると、それよりももっと大きなものを失う(場合によってはすべてを失う)」というリスクです。投資でいうと、典型的なのはオプションのショートポジションです。

 こういったリスクを取ってはなりません。むしろ、「損失が限定されていて、利益を得られるときは、その損失額に対してずっと多くを得られるもの」を選ぶべきです。

 つまり、見るべきは、勝つ確率よりも得られる額と失う額との比率です。前者より後者が小さくなるような選択肢は、捨てなければなりません。

 成功しているベンチャーキャピタルは、この原則を徹底しています。彼らの投資は、実はその大半が負けているのですが、負ける範囲は限られていて、勝つ投資のアップサイドは非常に大きくなります。

 中でも、スタートアップに特化したベンチャーキャピタルであるアメリカの「Yコンビネータ」や「ファイブハンドレッド・スタートアップス」などはその最たるものです。彼らはまず、小刻みにあちこちに銃弾を撃ち、ほとんど当たらないのですが、命中したところのアップサイドが莫大なものになるのです。

 ③の「制御不能リスク」には、税制の変更などが含まれます。一企業、一投資家では太刀打ちできないリスクです。前述のように、この中にイベントリスクも含まれます。

 ここで、過去に発生した大きなイベントリスクを振り返ってみましょう。

 1990年以降を見ただけでも、第一次湾岸戦争、アジア危機、ロシア危機、ITバブルの崩壊、同時多発テロ(9.11)、エンロンショック、第二次湾岸戦争(イラク戦争)、サブプライムローン問題、リーマンショック、ギリシャ危機、欧州政府債務危機・・・など、さまざまな世界的事件が頻発しています。

 また、日本国内に限った出来事でも、2000年のITバブル崩壊、2006年のライブドアショック、2011年の東日本大震災などが、国内株式市場に大きな影響を与えました。

 この中で、金融問題に端を発するイベントリスクは明らかに増加しています。これは、たとえば1980年代前半と2000年代後半以降の「TOPIXの月次リターン」の分布状況を比較すれば明らかになります。

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