NTTはどこへ行くのか
【第6章】NTTグループが抱える経営課題(3)
グループの牽引車、NTTドコモ

〔PHOTO〕gettyimages

第6章(2)はこちらをご覧ください。

 次に、グループの大黒柱・NTTドコモを見てみましょう。

 社団法人電気通信事業者協会の発表によれば、2013年3月末時点で、ドコモの加入者数は6153万契約で業界トップです。2位のKDDIが3771万契約、3位のソフトバンク・モバイルが3248万契約と比較すると、その規模は約2倍となっています。しかし、ドコモ独走の時代はそろそろ終わりに来ています。

競合会社が追い上げるが、なお差は大きい

 日本の携帯業界も、PHS時代などを経て、多くの合併や買収などが起こり、2006年くらいから現在のドコモ、au、ソフトバンク・モバイルの「3大手体制」に移りました。では、トップのドコモと競合2社の契約数の差はどうなっているでしょうか。

 2006年4月から12年10月までの期間で、ドコモと競合二社の加入者数の合計を比較してみました。すると、競合二社との差は一貫して縮まっていることがわかりました。特に、2011年春に競合2社の合計数がドコモを抜いた後は、KDDIとソフトバンクが着実に加入者を伸ばす一方、ドコモの新規加入者の伸びは鈍化しています。

 携帯電話は、第一世代の「アナログ通話」、第二世代の「デジタル通話」、第三世代の「デジタル通話+データ通信」と、約20年の間に三世代も進化しました。アナログ時代にいち早く携帯電話市場に参入したNTTドコモは、1990年代の爆発的な携帯ブームに乗って急成長しました。そのおかげで、ドコモは業界トップに君臨しているわけです。

 しかし、成長力は落ちており、過去の蓄えを食い潰しながらトップにいるとも言えます。では、なぜNTTドコモは、成長鈍化に陥ったのでしょうか。

 第二世代まで、携帯電話の主要サービスは音声通話でした。「どこでも確実につながること」が携帯の価値でした。しかし、第三世代の後半から状況が変わりました。アップルのiPhoneが切り開いた携帯アプリケーション・サービスによって、携帯の価値は「アプリケーションの使いやすさ」に左右されるようになりました。

 現在、日・米・欧・韓など携帯市場が成熟している地域では、スマートフォンがどんどん普及しています。2013年第1四半期、全世界ベースでスマートフォンがフィーチャードフォンを出荷台数で追い越しました。(IDC調べ)たぶん、あと3~4年もすれば、スマートフォンが携帯の主流となり、音声主体のフィーチャード・フォンは少数派になってしまうでしょう。

 NTTドコモは、携帯の「音声通話」に価値があったときに急成長しました。その後、アプリケーションを携帯で利用できるiモード(iMode)を開発し、データ・サービスの世界を切り開いていきます。iモードのサービスは当時、世界に類を見ない新しい試みで、その出発点は「簡易HTMLによるウェブ表示」です。HTMLとは、ホームページを作成するための簡易開発言語のことです。その後、ジャバ(Java)と呼ばれる本格的なプログラム言語を内包しながら発展していきました。

 異論はあるでしょうが、私はiモードを、携帯電話の将来を見据えた非常に先進的なアプローチだったと考えています。

 競合他社にとって、iモードを持つNTTドコモは強敵で、対抗しようにも、日本市場においてはなす術を知らなかったと言えるでしょう。その状況を変えたのが、スマートフォンでした。特に、iPhoneの登場によって同社の成長は鈍ったと言えます。これは、見方を変えると、通信事業者が端末メーカーから返り討ちに遭っていると捉えることもできます。

 それまで、音声サービスにせよ、ウェブ・サービス(iモード)にせよ、その支配権は通信事業者が握っていました。携帯事業者はネットワークを整備し、メーカーから端末を調達し、自社の直営店で販売します。これを「ウォールガーデン(囲い込み)戦略」と呼びます。この戦略によって、携帯事業者は巨大な利益を独り占めしてきました。

 アップルはそこへ、アプリケーション開発者とともに対決を挑んできたのです。スマートフォンはもはや電話機ではなく、携帯コンピュータです。1970年代から一貫してパソコンを製造してきたアップルは、多くの技術と人材、そして開発者コミュニティを持っていました。それらを総動員してスマートフォンを製造したアップルに、通信事業者は主導権を明け渡すしかありませんでした。

 また、アップルは各国で特定の携帯事業者と独占販売契約を結んだため、いわば「アップル組」と「グーグル組」に分かれて市場競争が展開されていきました。いち早くアップル組になったソフトバンク・モバイルは加入者数を伸ばし、NTTドコモとKDDIはグーグル組(アンドロイド端末)として戦いました。その後、アップルは独占販売戦略を改めたため、現在はKDDI(au)でもiPhoneを販売しているのはご承知の通りです。

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