堀潤×安藤美冬 【第2回】
「お前を組織の中で絶対に守ってやる」と言ってくれた先輩がいた

[左]堀潤さん(ジャーナリスト/「8bit News」主宰)、[右]安藤美冬さん(spree代表取締役/フリーランス)

【第1回】はこちらをご覧ください。

地方勤務になって見えてきた日本社会の現実

安藤: 入局した後は、最初、どの地方へ行かれたんですか?

堀: 岡山放送局でした。これがかなり衝撃的な体験だったんですね。安藤さん、今まで地方勤務のご経験ってありますか?

安藤: ないです。

堀: ご出身はどこでしたっけ?

安藤: 山形なんですが、山形ではほとんど生まれただけで、その後すぐ東京に移り、ずっと三鷹で育ちました。

堀: 僕も兵庫県で生まれ、そのあと大阪に行き、横浜に行き、大阪に戻り、さらに東京に行って・・・みたいに、あちこちに移り住んだんですけど、すべて大都市ばかりだったんです。岡山で初めて、いわゆる地方都市に住むことになってびっくりしたんですね。

安藤: 何にそんなに驚いたんですか?

堀: 岡山は良いところで、いろいろな人たちにすごく親切にして頂きました。ただ、こんな言い方をしたら「ふざけるな!」と怒られるでしょうけど、最初赴任したときは、正直、「地方に人が住んでいて、文化があるのか」と思ったんですね。

安藤: ずっと大都市に住んでいると、なかなかわからない部分ではありますね。

堀: 学生時代、「日本全国で公共事業が行われ、道路やダムなど無意味な土木工事に税金が無駄遣いされている」みたいな話をたくさん読んだり聞いたりして、なるほどと思っていたんです。それで岡山に配属されて山奥の方に行くと、確かにすごくきれいな道路が通っている。

 それで、最初は「これが無駄遣いの元凶か。俺が取材すべき対象に違いない」と考えました。車に乗って山間部を走り、道路や施設を見るたびに「おお、ここにも無駄がある。無駄、無駄、無駄・・・」と呟いて。

安藤: チェックしながら走っていた。

堀: そうしながら取材に行くわけです。で、たとえば農家のおばあさんに、「本当にきれいな道路が通っていますね」なんて話しかけると、「この道路のおかげで、バスに乗って病院に行けるようになったのよ。私、腰が痛くてつらいんだけど、道路ができて病院に行けるようになって、本当に助かったの」とか言われるわけですよ。別の人は、「ようやくうちの村にもこんな立派な道路が通って、嬉しくて嬉しくて。道路は村の誇りなんよ。これも○○先生のおかげでね」などと言っている。

 確かに、東京から見たら無駄かもしれないけれども、道路のおかげで身体の悪い人が病院に行けたり、地元が誇りを持てるようになったりしているのも事実なわけです。「道路がうちの村にできて、やっと私たちも他の村に対して胸を張れる。都会の人の生活に近づける」といった話を聞いて、自分がいかに社会を偏った目で、勝手な想像で見ていたかというのに気づかされたんですね。

安藤: 一つの大きな現実を知ったと。

堀: だから現場の取材はものすごく大事だし、そういう地方の現実的な部分を、いわゆる「都市型リベラル」と言われるホワイトカラーの人たちに伝えることが、国民みんなで日本のあり方を考えるきっかけになると思いました。

 最初にNHKに入ったときは、大きな理想を掲げ、大きな話として「日本のメディアを良くする」「日本を良くする」などと言っていたけれど、現場に行ってみると、解決しなきゃいけないことや考えなきゃいけないことは、もっと細かくて、もっと現実的だった。そういう部分から市民の声をきちんと取材し、報じるのが重要だ、と強烈に思いましたね。

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