LNG(液化天然ガス)シェールガス革命
価格引き下げに期待【特集】

アメリカでシェールガスの採掘ガ進む=米国ノースダコタ州で11年9月3日、ニューヨークタイムズ/アフロ

 東日本大震災後に発電の主要エネルギーとなったLNG(液化天然ガス)の調達を巡り、価格を下げようというさまざまな施策が模索されている。原油も含む燃料調達費が増大した結果、11年には31年ぶりに貿易収支が赤字に転落し、12年には貿易赤字がさらに拡大した。円安が進行していることもあり、燃料調達費の削減はエネルギー分野にとどまらず、日本経済にとって喫緊の課題になっている。高値に張り付いた単価をどう下げていくのか。米国で生産が増えるシェールガスの輸入やロシアの極東地区での日露の共同ガス開発など、具体化しているプロジェクトも多い。

 東日本大震災の大津波による東京電力福島第1原発事故をきっかけに、一時国内のすべての原発が稼働を停止した。現在も関西電力大飯原発3、4号機を除いて再稼働されていない状況が続いている。このため発電の主力は原油やLNG、石炭を燃料にした火力発電所に移り、昨年11月の電気事業者の発電比率では火力発電が91%を占めている。

 燃料のうちLNGの年間需要が、10年の約7000万トンから12年には約3割増の約9000万トンまで急増した。12年のLNG輸入単価は10年比で約5割上昇し、LNG輸入額は10年に3・5兆円だったのが、12年には6兆円と2・5兆円も膨らんでいる。原油も含めた燃料調達費が増大した結果、貿易収支の赤字は11年が2・6兆円、12年(12月は速報値)には6・9兆円に拡大した。

 燃料調達費の削減を進めたい政府や経済界が注目するのが、米国で生産が拡大しているシェールガスだ。シェールガスは頁岩(シェール)と呼ばれる固い岩石に含まれる天然ガス。岩石に亀裂を入れて天然ガスを採取する技術が進歩したことにより生産コストが低下し近年、商業化が進んだ。

中部電力川越火力発電所に接岸した世界最大のLNG船「Q―Max」=三重県川越町で11年10月3日

 開発手法は地表からは垂直に井戸を掘削、シェール層で水平に井戸を掘削し、水圧で亀裂を入れてガスの流路を確保し採取する。06年以降、米国やカナダで生産が拡大し、11年の米国の生産量はLNG換算で1・6億トンと、日本の年間LNG輸入量の2倍近くなっている。シェールガスの採取が可能になったことから、世界の天然ガスの可採埋蔵量は約60年分から約120年分に増えたとされる。

 北米からのシェールガス輸入の早期実現に向けて、さまざまなプロジェクトが進展している。日本企業も参画している三つのプロジェクトにより、将来的には日本のLNG年間輸入量の2割弱にあたる年間計約1500万トンの輸入が見込まれている。

 テキサス州フリーポートでは、フリーポート社と大阪ガス、中部電力が、それぞれが年間220万トンを確保する契約を締結した。メリーランド州コーブポイントでは、ドミニオン社と住友商事・東京ガスが年間230万トンを引き取ることで基本合意に達した。ルイジアナ州キャメロンでは、センプラ社と三菱商事と三井物産がそれぞれ400万トンを取得することで基本合意した。また、三菱商事がシェルなどと共同で、カナダ西海岸で20年ごろに生産を開始するLNGプロジェクトを検討しているほか、複数のLNGプロジェクトが進行している。

 しかし、輸入には米国政府の承認が必要なことや、実際にLNGの輸出が開始されるのは17年以降となるため、それまでの間の調達をどうするかという課題が残されている。

米国経済への影響を調査

 LNG輸出を巡る米側の動きはどうなっているのだろうか。米国エネルギー省(DOE)は昨年12月にLNG輸出が米国経済にもたらす影響について、第三者機関に委託した調査結果を発表した。調査結果は(1)輸出は米国に経済的利益をもたらす(2)輸出量が多い方が経済的利益は大きい――というものだった。この調査結果に対するパブリックコメントを今年2月25日まで募集し、終了後に個々の輸出申請案件(全16件)について順次審査を実施している。審査順は1番目がフリーポート、3番目がコーブポイント、5番目がキャメロンとなっている。

 こうした動きを受けて米国議会では、超党派の推進派議員13人の下院議員(共和党12人、民主党1人)と11人の上院議員(共和党9人、民主党2人)が今年1月、それぞれ下院と上院に日本などの同盟国向けのLNG輸出を自動承認する法案を提出したほか、輸出の早期実現を求めるレターが複数提出されている。

 産業界では、石油ガス関連産業やガス産出州の商工会議所などが自由貿易や同盟国支援の重要性などの観点からLNG輸出申請の早期許可を求める意見をパブリックコメントに出した。

 一方、慎重派議員たちは、LNG輸出が経済にもたらす影響分析のやり直しを求めるレターを相次いで出している。産業界でも、ダウケミカル(化学)やニューコア(電炉)などの天然ガス消費産業の企業・団体が経済分析のやり直しを求めるとともに、拙速なLNG輸出許可に反対する意見をパブリックコメントに提出した。環境保護団体も、天然ガス開発に伴う環境問題を指摘したうえで、LNG輸出申請許可に反対する意見を提出している。

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