小泉武夫 第1回 「ロンドンのお土産に英国王室御用達"ロイヤルビーンズ"をくださった高円宮殿下の思い出」

島地 勝彦 プロフィール

小泉 でもシマジさんのことだから、面白いお話をいっぱい聞き出したんでしょう?

シマジ 当然です。飲み代は集英社インターナショナルで支払うんですから。

小泉 編集者魂が燃えたわけですね。何を訊かれたんですか?

シマジ 「殿下のお小遣いはどうなさっているんですか?」と単刀直入にお訊きしたんです。

小泉 面白い!

シマジ 殿下の告白によれば、使おうが使うまいが毎日、新券の5万円が財布に入っているそうです。でも殿下は方々に非常に人気があったから、お座敷がかかることが多く、ほとんどご自分では使わなかったそうです。

小泉 なるほどねえ。わかります、わかります。

シマジ クルマだって運転手つきの国産車が店の下でずっと待っていましたから。いかにもボディーガードみたいな屈強な運転手がクルマの脇に立っていました。

 その店のママが「殿下、そのうちお一人でお忍びでいらしてください」と冗談をいったら、殿下は「ママさん、ここは5万円では無理でしょう」と真面目に仰っていました。ママは調子に乗って「殿下なら、何人お連れになられても、特別にお安くしておきますわ」といっていましたよ。

小泉 殿下が長生きされていたら、お忍びで行ったかもしれませんね。

シマジ 感銘を受けたのは、ママやホステスたちが一人ずつ殿下と記念写真を撮りたいというとこになったので、わたしが代表して交渉すると、気軽に「いいですよ、どうぞ、どうぞ」と仰って、女性たちが代わる代わる殿下と写真を撮ったんです。

 撮影後、「どうもスミマセンでした」というと、「これもわたしたちの国民に対する役目です」というんです。そういう方だから高円宮殿下は皇室のなかでもとくに人気があったのでしょう。

小泉 しかし皇族の方々はみなさんお酒がお強いですよね。

シマジ そうらしいですね。昭和天皇は従兄弟たちを集めて年に1回宴を持ったらしいですが、そのときも誰ひとりとして酔う方はいらっしゃらなかったそうです。ぐでんぐでんに酔っ払うのはわれわれ庶民の特権らしいですね。