小泉武夫 第1回 「ロンドンのお土産に英国王室御用達"ロイヤルビーンズ"をくださった高円宮殿下の思い出」

島地 勝彦 プロフィール

シマジ 高円宮殿下は非常に気さくなお方で、わたしも一度、夕方の6時ごろから朝の4時ごろまで一緒に飲んだことがあります。たしかにお酒が強かった。

 その日は、シャンパン、ワインと飲まれて、そのあとは焼酎をずっとお一人で飲んでいらっしゃいました。その夜、宮様はカラオケをやりたいということでしたので、小さな銀座の店を貸し切りにしてもらい、大いに愉しんでおられました。

 持ち歌はサザンが多かったですね。上手かったです。そばにいた作曲家の三枝成彰さんが殿下の歌を聴いて涙を流しているんですよ。余程、殿下の熱唱が作曲家のこころに響いたのでしょう。

小泉 それはまた凄い体験ですね。シマジさんはたった一度会っただけでも、ずいぶん濃密な時間を過ごされたんですね。宮様もきっと愉しかったんでしょう。

シマジ 結局、6時間くらいの間に、銘柄指定の焼酎一升を殿下おひとりで全部飲まれました。それでも酔ったそぶりは少しも見せない。立ち居振る舞いは典雅そのものでしたね。

小泉 そうですか。じゃあ、ほかの人たちは別のお酒を飲んでいたんですか?

シマジ わたしたちも4,5人でロイヤルハウスホールドを2本ぐらい空けましたかね。

 で、殿下が凄いのは一度もトイレに立たれなかったことです。わたしなどは何回行ったことか、数え切れないくらいなのに、宮様は終始平然としていらっしゃる。わたしが気を利かせて「殿下、お手洗いは大丈夫ですか?」とお尋ねしたら「わたしたちは子供のときから、こういうときは手洗いに行かないよう訓練されているから大丈夫なのです」といわれたのには、ビックリしたのと同時に心配になりましたね。

小泉 健康にはあまりよろしくないでしょうね。

シマジ 悲しいことにそれから2ヵ月もしないうちに、殿下はお隠れになられたのです。無理をなさらず、庶民的にトイレに何度も行っていたら、あんなことにはならなかったのではないかと、わたしは個人的に思うときがあります。大変惜しい方をわれわれ庶民は失ってしまいました。あんな壮絶な我慢を毎晩やっていたら、酒毒がお身体に回るでしょう。残念なことです。まさに国家的損失です。