そうなると、カギはやはり投手陣ということになってくるのだろう。ここまで打線にばかり焦点を当てて語ってきたが、一部の主力投手たちがヤンキースの序盤戦の建て直しの立役者だったことも忘れるべきではない。
「開幕直後は苦戦したけど、その後は投手陣がよく投げてくれた。3~5点くらいの得点で勝ってこれたのは投手の頑張りのおかげだ」
ジラルディ監督も目を細めていたが、CCサバシア、黒田、アンディ・ペティートという3人は合わせて11勝5敗、防御率2.88。このベテラン先発投手3人から、守護神マリアーノ・リベラ(ここまで11度のセーブ機会をすべて成功)へと繋ぐ継投策が今季もチームの必勝パターンとなっている。
とはいえ、第4、第5先発投手のフィル・ヒューズ、イバン・ノバは2人でわずか1勝で、ノバはすでに故障者リスト入り。チーム防御率4.00はメジャー18位に過ぎない。これから先も32歳のサバシア、38歳の黒田、40歳のペティート、43歳のリベラという高齢投手たちに依存する部分は大きいはず。疲れの出る夏場に向けて、必ずしも順風満帆の陣容とは言い切れまい。
いずれにしても、低い前評判でスタートした今季は、ヤンキースにとって波瀾万丈のシーズンであり続けそうな気配である。これから先もパッチワーク打線が効果を発揮し、ベテラン投手陣が踏ん張り、プレーオフ戦線を邁進して行くのか。ケガ人たちが徐々に復帰し、チームにさらに勢いをつけていくのか。あるいは例年と比べての層の薄さが響き、少しずつ失速していってしまうのか。
序盤戦の頑張りは“伝統の力”をアピールするのに十分だったが、まだまだ先は長い。本当にさまざまなシナリオが考えられ、それゆえに興味深い。ヤンキースにとって近年で最も先が読みづらいシーズンは、始まったばかりである
(成績は現地5月2日現在)