週現スペシャル 大研究 遺伝するもの、しないもの【第1部】一覧表でまるわかり 遺伝する才能、しない才能、微妙なもの

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「努力する才能」も遺伝する

 ただし、人間の遺伝子に書き込まれている遺伝情報を全て解読する「ヒトゲノム計画」が完了した現在でも、たとえば「数学が得意になる遺伝子」や「英語が得意になる遺伝子」が発見されているというわけではない。東京大学大学院教授で、分子生物学者の石浦章一氏がこう説明する。

「仮に、数学が得意な父親と苦手な母親の間に、数学が得意な息子が生まれたとしましょう。でも、コンピュータを使ってこの一家の遺伝子を詳細に調べても、父親と息子にあって母親にない遺伝子というのは、意外と見つからないんです。

 これは、頭のよさが数百、数千というたくさんの遺伝子の組み合わせによって決まるせいだと考えられます。ですから、特定の遺伝子が原因で起こる病気などと比べれば、後天的な要因も大きいのではないでしょうか。

 むしろ、一つのことをじっと考え続ける持続力や集中力などの能力が遺伝することの方が、学業には関係しているのかもしれません」

 たとえ知能そのものが完璧に遺伝するわけではないにしても、「辛抱強く勉強する才能」まで遺伝で決まってしまうのだとしたら—結局のところ、それすら持たない凡人には、逆転の余地はないのだろうか。

「芸術的才能は後天的なもの、つまり練習でなんとかなる。例えば、何年か音楽の勉強をした後では、脳の中の音を処理する部分が広がるということがわかっています。音痴の家系というのもまず見当たりません。

 それに、発想力も遺伝では決まらないといえるでしょう。一般的に、20~30代でピークを迎え、だんだんと衰えてゆくような能力は後天的に鍛えられるものだと考えられます」(石浦氏)

 事実、絶対音感は才能のあるなしにかかわらず、6~8歳頃までの訓練によって身につくか否かが決まるという。日本人には「勉強は努力、芸術は才能」というステレオタイプも根強い。だが専門家たちの意見を総合すると、どうやらこれは正反対—「勉強は才能、芸術は努力」と言ったほうが、遺伝的には実情に近いようである。

高木豊とその子どもたち

 学業以上に打ち込む人も多い、スポーツの場合はどうだろうか。こちらは「努力ではどうにもならない」などということでなければよいのだが……。

「一口に運動能力といっても、筋肉の質だけでなく、筋肉の付き方や骨格のほか、呼吸器と血管系、神経系の機能など、いくつもの要因が関係しています。ただ、スプリンター向き、持久力系競技向きという遺伝的な適性は確かにあります」