二宮清純レポート ダルのこと、大谷翔平のことを語りつくす
陽岱鋼「なぜ日ハムはいいチームなのか」

週刊現代 プロフィール

 今春、開催されたWBCでは台湾代表の1番レフトとして出場し、韓国や日本を苦しめた。今では間違いなく日本球界を代表するアウトフィールダーである。

あり得ないジャンプ力

 監督の栗山英樹も陽の守備には全幅の信頼を寄せる。監督に就任するなり陽をライトからセンターに移した。

「岱鋼の守備力はセンターとしては、今、日本で一番でしょう。守備範囲が広いことに加え、打球への飛び出しが素晴らしく速い。(糸井)嘉男も速いけど、岱鋼の方が、もう半歩、反応が速いような気がします」

 余談だが、陽の外野コンバートに最後まで反対した人物がいる。当時の二軍監督・水上善雄だ。ロッテ時代にはダイヤモンドグラブ賞(現ゴールデングラブ賞)に輝いたこともある往年の名ショートストップだ。

 その理由を聞こう。

「彼はスケールが大きく、常識では測れないようなプレーをする。僕は、それを尊重したかったんですが、理解されなかった。

 彼が内野をやっていた頃、僕の耳に届いていたのは"走るのも、打つのもすごい。しかしミスが多い。継続するのが苦手"というネガティブな評価ばかり。

 しかし、あえてショート経験者から言わせてもらえば、ショートとしての素質、感性は素晴らしかった。もっと長所を伸ばしてやっていれば、どれほどすごい選手になったことか……」

 水上の口調は、さらに熱を帯びる。

「僕はオジー・スミスやデレク・ジーターなどメジャーリーグを代表するショートのプレーを見てきましたが、陽は引けをとりません。あのまま続けていれば、間違いなく世界でも五指に入るショートになっていたと思います。彼に"もう外野の選手になっちゃったなぁ"と言うと、"いや、まだショートをやりたいんです"と冗談っぽく返してきました。これは僕の願望でもありますが、もし何かのきっかけで彼がもう一度、ショートを守らなければならなくなった時、球界に衝撃が走るはずです」

 陽岱鋼は台湾の台東県台東市出身である。元の名は仲壽。6人兄弟の三男で、福岡ソフトバンクに所属するピッチャーの耀勲が長男、独立リーグの四国アイランドリーグplusでプレーしていた耀華が次男、バスケットボールで台湾代表経験もある詩慧は妹である。台湾では有名なスポーツ一家だ。