二宮清純レポート ダルのこと、大谷翔平のことを語りつくす
陽岱鋼「なぜ日ハムはいいチームなのか」

週刊現代 プロフィール

 早速、新米外野手に試練が訪れる。外野手に転向して間もない'09年8月9日の楽天戦。場所はKスタ宮城。1対1で迎えた7回、山崎武司(現中日)の放った打球は左中間を襲った。陽にとっては外野手に転向して初めてのスタメン、加えて不慣れな屋外球場でのナイトゲーム。ある意味、ミスを犯す条件は、全て揃っていた。

 落下点に走り込もうとして目測を誤った。次の瞬間、無情にもライナーがグラブの先をすり抜けていった。

「何やってんだ!」

 ベンチに帰ってくるなり、清水雅治外野守備・走塁コーチ(現千葉ロッテコーチ)から叱声が飛んだ。

「僕、この時、思いました。"外野は無理なんだ"って。"詰まりだな"と思った打球がどんどん伸びていって、最後はバンザイですよ。もう、頭の中は"なんで?"という思いでいっぱい。こんな打球ばかり来るなら、僕はフェンスの前で守るしかない。本当に悩みました」

 二軍落ちした陽を待っていたのは、外野守備・走塁コーチの川名慎一だった。現役時代は俊足と好守を売り物にバイプレーヤーとして活躍した。

「能力は高いが基本ができていない」

 川名の目に22歳の陽は、そう映った。

「当たり前のことを当たり前にやる。簡単そうに見えて、一番難しいのが、これなんです。基本を身に付けさせるため、まず陽にはボールへのチャージ、捕球、ステップ、送球、この一連の動作を徹底して教えました。

 彼は自分で決めたことは投げ出さずにやり抜くタイプ。一例をあげればステップからのスローイング練習。これだけは試合でミスをし、しょげかえっている時でも"今日だけは勘弁してください"と言わないんです。このガッツには感心しました。

 外野手としての完成度? 昨年までウチには糸井という名手がいました。身体能力は糸井の方が上ですが、一瞬の判断力は陽の方が勝っているのではないか。専門的に見た場合、外野手はグラブ方向の打球を追うのが難しいんです。右利きのセンターなら右中間方向の打球。ところが、彼はこれを苦にしませんね。特筆すべきことだと思います」

 川名の指導もあって、陽は'11年のシーズンからレギュラーに定着。昨季は全試合に出場してゴールデングラブ賞に輝いた。

「川名さんには、いつも"まだまだだ"と言われます。ただ、経験を積んで、やっと外野のことが分かってきたかなと……」