二宮清純レポート ダルのこと、大谷翔平のことを語りつくす
陽岱鋼「なぜ日ハムはいいチームなのか」
背番号「1」は、本人が球団に希望した。少年時代、テレビに映る「ダイエーの秋山幸二」がアイドルだった。そして「一番の選手になるため」に祖国を離れた男は、その階段を登り続けている。球界に異彩を放つ球団で、アミ族の少年が目にしたものとは。
短い距離を投げられない
距離にして約70m。私が目にしたのはバックホームという名の光の矢だった。
4月10日、東京ドームでの東北楽天戦。北海道日本ハムが2対0とリードした3回表にスーパープレーは飛び出した。
2死一、二塁。牧田明久が放った打球は二遊間を破り、センター前へ。ダッシュし、素早いステップで、これを処理した陽岱鋼はムチのように自慢の右腕をしならせた。
送球はキャッチャー鶴岡慎也のミットに一直線。二塁走者の松井稼頭央は鶴岡の固いブロックに阻まれ、本塁で憤死した。
4回表には、陽に負けじとレフト中田翔もレーザービームを披露し、この試合、日本ハムが6対0で勝利した。
翌日のインタビュー。まずは、このスーパープレーから切り出した。
「牧田さんのバッティングを見てたら、引っ張りながらセンター前に飛んでくるイメージが、すごくあったんです。ただ、思ったより、打球は強かったかな。
センターからだと、キャッチャーの構えるミットの位置が見えるんです。あの時は鶴岡さんのミットが、真ん中寄りに来た。これ、引っ張るやろうなと。もう、読みどおりでした」
このプレーを称えたのが、自身も西武時代は名手として鳴らした大塚光二外野守備・走塁コーチだ。
「元内野手だけあって、ボールへのチャージが速く、打球判断も素晴らしい。今の岱鋼の守備なら西武時代、一緒にプレーさせてもらった秋山幸二さんに匹敵するでしょう。だから(ライトの)大谷翔平には"守備のことは岱鋼に聞け!"と言っているんです」
昨年まで日本ハムの投手コーチをしていた吉井理人は「陽は日本のバーニー・ウィリアムス」と絶賛する。
バーニーは三拍子そろった元ヤンキースの名外野手でゴールドグラブ賞に4度輝いている。