日本経済にこれほど前向きな雰囲気が漂うのは何年ぶりのことだろう。ところが、人々が明るい表情をするのが、なぜか気に食わない勢力がいる。彼らは何をどう考え、この空気に水を差しているのか。
何でもケチをつけてみる
「私はアベノミクスについて、これまでの総理大臣とまったく逆のチャレンジをしている、という点で評価しています。最近の歴代総理は、歳出を極力抑えなければならないという固定観念に縛られ、いわば〝ケチケチ政策〟を取ってきた。ところが安倍首相は、そんな緊縮策をやめ、公共投資、金融緩和によって、需要を作り出し、その上で成長戦略を実施するという逆の方向性を打ち出した。
景気を左右するのは、文字通り〝気〟です。結果的に株価は上がり、企業経営者の見通しも好転しています。夏のボーナスの満額回答をする企業も出てきました。今のところ、アベノミクスは成功していると言えるでしょう」
そう語るのは、ジャーナリストの田原総一朗氏だ。
アベノミクスにより、日経平均は数年ぶりの高値圏を推移している。景況感の好転で、街角では宝飾品など高級品の売り上げが伸び、一般飲食店でも客足が回復するなど、日本経済は復活の兆しを見せ始めた。
ところが、そんな上向きムードに水を差す声が同時に上がり始めている。
たとえば4月17日の党首討論。民主党の海江田万里代表は、「劇薬を飲んだ。副作用や落とし穴がある」とアベノミクスを批判。同・前原誠司元代表も、「アベノミクスは偽物だ。儲かるのは外国人投資家だけ」と酷評。仙谷由人元官房長官も「むちゃくちゃだ」などと痛烈に批判した。
この論調は大マスコミでも強い。とくに、以前から安倍首相との緊張関係が取り沙汰されてきた朝日新聞は、アベノミクスの効果に懐疑的だ。黒田東彦・日銀総裁が〝異次元の金融緩和〟を打ち出した翌日・4月5日付の社説では、こう苦言を呈している。
〈黒田日銀に、これら(国債買い取りの上限設定)に代わる歯止めを設ける姿勢が見られないのには、危惧を感じる〉〈過去の経験では、マネタリーベースが増えてもデフレは解消しなかった〉〈円安に伴う輸入物価の上昇だけがもたらされる「悪いインフレ」や不動産バブルなど、いびつな現象が広がりかねない〉
こうした批判は、論理としては真っ当だ。だが、ここで少し考えてほしい。
「それは危ない」
「やってはいけない」
そんな消極的思考が、日本の経済再生を、長く阻んできた要因ではないのか。