対談 堀潤 × 津田大介 【第1回】
「世論」と「中立」が好きな日本のテレビは、なぜつまらなくなったのか

津田 だいたい、そんな返事なんて全部テンプレート化しますもんね。コピペで返事を作る作業になるはずです、絶対に。

 その結果、視聴者の声の本質を考えるという方向からはどんどん外れていくわけです。

 テレビに対する苦情は、取材を受けてくださった方からの場合、「思っていたのとは違う取り上げ方をされた」とか「自分が言ったことの極端な部分だけ抜き取って使われた」とか「自分が本当に言いたかったことが曲解された」といったものが多いんです。一方、見ている方からの苦情は、「本当はこういう話を聞きたかったのに、ちゃんと伝えてくれなかった」というものが多い。

 その両方を本質から考えると、テレビのアプローチというのは、もっと別のところにあるはずなんです。なのに、どうしても時間軸に縛られて、1時間の中の完成度をどれくらい上げるかという作業になってしまう。このインターネット時代、まずは時間軸を取り払った情報発信を考えていかなければいけないと思います。

津田 1年ほど前、堀さんのTwitterアカウント閉鎖騒動がありました。当時、震災も含めて情報発信にものすごく貢献していたアカウントが局の意向で閉鎖になり、それが堀さんのアメリカ留学のきっかけになったのだと思います。そして今回、留学中に作った映画がNHKを辞められる一つの原因になりました。

 一般のTwitterユーザーや堀さんを表面的に知っているだけの人は、「アナウンサーというのは、誰かが作った原稿を綺麗に読んで届けるのが仕事だろ? 一介のアナウンサーが自我に目覚めて何を言っているんだ」と思っているかもしれません。

 しかし、お話を聞くと、堀さんの大学の卒論のテーマは「ナチスドイツのプロパガンダと戦時下のNHKのプロパガンダ」だという。つまり、NHKを受けるときから、アナウンサーの業務よりもジャーナリスティックな仕事に興味があったということですね。

 はい。「アナウンサーは自分の思ったことが言えないんだ」と気づいたのは、NHKに入ってからでした。「騙された」と思った。

津田 でも、それは中学生くらいでもわかることじゃないですか(笑)。

 僕はわからなかったんです。原稿を読むのが仕事だというのはびっくりしました。

津田 確かに僕らの世代になると、久米宏さんや筑紫哲也さんみたいな、自分の意見をはっきり言うキャスターという人たちを見てますからね。

 高校生くらいのとき、『アンカーウーマン』という映画にも影響されました。

津田 「アナウンサー=ジャーナリスト」みたいに思い込んだ?

 そうなんです。僕がアナウンサーに対して持っていたのは、アナウンサーではなくキャスターのイメージでした。それが間違いだったということが、中に入って初めてわかったんですね。

〈次回に続く〉

堀潤 (ほり・じゅん)
ジャーナリスト。1977年生まれ。2001年にNHK入局。「ニュースウオッチ9」リポーターとして主に事件・事故・災害現場の取材を担当。自取材で他局を圧倒し報道局が特ダネに対して出す賞を4年連続5回受賞。10年、経済ニュース番組「Bizスポ」キャスター。12年より、アメリカ・ ロサンゼルスにあるUCLAで客員研究員。日米の原発メルトダウン事故を追ったドキュメンタリー映画「変身 Metamorphosis」を制作。13年よりフリーランス。NPO法人「8bitNews」代表。
津田大介 (つだ・だいすけ)
ジャーナリスト、メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。関西大学総合情報学部特任教授。早稲田大学大学院政 治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野として執筆 活動を行う。ソーシャルメディアを利用した新しいジャーナリズムをさまざまな形で実践。著書に『Twitter社会論』『未来型サバイバル音楽論』『情報の呼吸法』『動員の革命』などがある。週刊有料メールマガジン「メディアの現場」配信中。