『対中戦略 無益な戦争を回避するために』(近藤大介著)
~第1章より「仕掛けられた反日デモ」他抜粋~

堂々と行われる、悪質な「日本いじめ」

 再び、前出の中南海関係者の解説を聞こう。

 「反日に乗じて、胡錦濤一派を封じ込めたかった江沢民一派にとって、9月の反日デモの煽動は、思いの外、効果を上げた。まさに200パーセントの出来栄えだったのだ。そこでこの勢いを、11月の共産党大会まで持続させようとした」

 こうした中、尖閣諸島の国有化に端を発した中国の「日本いじめ」は、10月1日の国慶節(建国記念日)の大型連休が明けても、収まりを見せなかった。前世紀の冷戦時代には西側諸国で"アカ狩り"が吹き荒れたが、この時、中国で起こったのは、まさに"日狩り"とも言うべきものだった。日本人が最も多く暮らす上海の状況を見てみよう。

 2012年の総貨物取扱量5億200万tと、いまや世界一の港湾に成長した上海港の発展に「大きく寄与した」と地元で礼讃されていた日系企業がある。広島県福山市に本社を置く日本第3位の造船メーカーの常石造船だ。

 10月11日晩、同社の4人の日本人駐在員と、1人の中国人社員の計5人が、上海一の観光名所である"外灘"近くにオープンして間もない高級焼き鳥店「鳥真」で、ビールと串焼きをつまんでいた。

 そんな晩餐のひと時を打ち破るような出来事が起こった。周囲で食事していた中国人男性のグループが酔った勢いで、「お前らは日本人か!」と絡んできたのだ。

 常石の中国人社員が間に入って応対した。だが悪酔いした中国人グループは、「釣魚島を占領しやがって!」などと毒づいて、ナイフを取り出し、中国人社員を斬りつけた。店にいた客たちがたちまち、「ワーッ」と沸いて野次馬と化した。店員が慌てて警察に通報したが、その間にも、日本人駐在員たちが殴る蹴るの暴行を受け、病院送りとなったのだった。

 中国経済の発展に寄与してきた名門企業の日本人駐在員にとって、まさに、降って湧いたような災難だった。

 この事件を、中国共産党機関紙『人民日報』傘下の国際ニュース紙『環球時報』が小さく報じると、中国のネットユーザーたちは、狂喜乱舞した。

〈そうか、日本製品を壊したりせずに、日本人を壊せばいいんだ!〉

〈よし、この勢いで釣魚島へ上陸だ!〉

 だが、被害を受けたのは、常石の社員ばかりではない。9月のデモで1万7000人もの"暴徒"に取り囲まれた上海総領事館は、ホームページで次のような例を挙げ注意を喚起した。