NTTはどこへ行くのか
【第6章】NTTグループが抱える経営課題(1)
成長戦略を描けないNTT東西

〔PHOTO〕gettyimages

第5章(5)はこちらをご覧ください。

 電話に始まるテレコミュニケーションの歴史で、過去20年間はもっとも変化の激しかった時期でしょう。90年代は携帯電話が急速に普及する一方、長距離電話サービスがなくなり、最終的には固定電話が衰退して行きました。

 また、インターネットの普及によって、パソコンや携帯向けのデータ通信がテレコミュニケーションの主役にのし上がり、現在はモバイル・ブロードバンドへと発展しています。

 年間売上10兆円を超えるNTTグループも、こうした変化に対応してグループ内で花形プレーヤーが変わる一方、縮小や撤退に直面するプレーヤーもいます。本章では、こうしたNTTグループの大黒柱であるNTT東西とNTTドコモを見てみたいと思います。

厳しい経営環境にあるNTT東西

 東日本電信電話株式会社。通称─NTT東日本。その巨大な本社ビルは新宿の新国立劇場の隣にあります。高低の2棟があり、高層側の入り口は受付がいかにも小さく見える広々としたロビーが印象的です。

 「2010年に光アクセス・サービスは、やっと単年度黒字に転換したんですよ」と、当時NTT東日本の社長だった江部努氏(現在は取締役相談役)は、穏やかな口調で私のインタビューに応じてくれました。世界最先端の光ファイバー・ネットワークを誇る同社ですが、その光投資について、同氏はこんな話を語ってくれました。

 「メタル(従来の電話線)をつかうxDSLでは、将来を考えれば通信サービスを支えられません。やはり光ファイバーでなければならなかったのは事実でしょう。ですが、『土俵を変えたかった』のも本音です。

 厳しい規制が掛けられた電話網では、どうしようもなく経営が苦しかった。光ファイバーによって再びNTT(地域網)の優位性を確立したかったのも事実です。(中略)将来、(我が社の)生命線が固定ブロードバンドにあるのなら『光で勝負するしかない』とも考えました」

NTT東日本の本社ビル

 NTT再編成にともない、1999年7月に発足したNTT東日本および西日本は固定と携帯や海外との相互接続など、いまも日本の通信サービスを担い続けています。

 しかし、90年代に始まった爆発的な携帯電話ブームで、「アナログ電話」の需要は急速に減ってゆきます。街角から公衆電話が消え去ったことが、それを象徴しています。しかも、東西両社は、NTT法による規制から新分野にも進出できず厳しい経営を余儀なくされてきました。もちろん、年間数%の減収減益が続くと言っても、アナログ電話網は巨大な売上を維持しています。

 しかし、欧米の通信事業者がアナログ電話網を使ってDSLサービスなどのブロードバンド分野に活路を見いだす一方、NTT東西は厳しい規制から本格的なブロードバンド・プロバイダーになれず、回線を貸与する限定的なサービスに留まりました。

 もうすこし正確に述べれば、欧米では通信事業者が整備したネットワークでは独占的にISPの役割も兼ねています。そのため、ブロードバンド放送など放送と通信の一体サービスにスムーズに移行することができます。

 一方、日本のフレッツADSLやフレッツ光では、回線とは別に「プロバイダー」と契約する必要があります。回線とプロバイダーの分離は競争政策の関係ですが、放送と通信の融合サービスを実現する意味では弊害となります。

 NTT東西が自前で張った回線を使って独占的にサービスを提供できないため、欧米事業者のような自由な成長戦略を描くことができません。そのため、NTTグループのなかで両社はもっとも激しい人員削減とコストカットを進めました。江部氏が言う「土俵を変えたかった」という言葉は、同社のこうした状況を象徴しています。

 では、成長戦略のかなめと期待された光ファイバー・ビジネスはどうでしょうか。2011年夏のインタビュー当時、光ファイバーの整備はNTT東日本営業地域の約97%をカバーしています。NTT東日本の光ビジネスは2010年に単年度黒字になり、ようやく合理化と人減らしの嵐が過ぎ去ったという状況にあります。

 光ファイバー網(FTTH)の市場占有率は、12年3月現在で74.3%と高い比率を占めていますが、肝心の契約者数(フレッツ光)が、なかなか目標の2000万加入まで伸びません。また、NTT西日本は電力系事業者などとの競争があり、NTT西日本以上に光ファイバー事業は厳しい状況にあります。

) フレッツ光とは、NTT東日本のBフレッツ、フレッツ光ネクスト及びフレッツ光ライト、NTT西日本のBフレッツ、フレッツ・光プレミアム、フレッツ・光マイタウン、フレッツ光ネクスト及びフレッツ光ライトが含まれている。

 NTT東西をあわせて、アナログ電話サービスの縮小も続いています。通話時間の減少に加え、加入者の純減も続いており、NTT東西の音声伝送収入(IP系を除く)は前年比733億円減少の5,948億円(2012年9月末期決算)になっています。

 とはいえ、NTT東西の売上は年間3兆5,278億円(2010年度)と巨額で、NTTドコモと並んでグループの大黒柱であることに間違いはありません。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら